うちの歯科衛生士は仕事できない!と嘆く前にできること

歯科衛生士の仕事ぶりに満足できず、悩んでいる院長先生は多いかもしれません。

「うちの歯科衛生士は使えない!」と嘆くことは簡単ですが、本当に歯科衛生士自身の問題なのか、仕事ができないことに何か理由がないか、今一度振り返ってみる必要があります。

この記事では、「仕事ができない」と思っていた歯科衛生士のパフォーマンスを高めるために医院ができることを解説します。

歯科衛生士が仕事ができない!と嘆く前に意識したいポイント

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(画像=pixta)

歯科衛生士の多くが仕事に対して前向き

まず最初に意識しておきたいポイントとして、「歯科衛生士の多くが仕事に対して前向きである」という事実があります。

公益財団法人 日本歯科衛生士会の調査「歯科衛生士の勤務実態調査報告書」のP44「歯科衛生士としての仕事に対する意識について」によれば、「歯科衛生士の仕事が好き」「やりがいや誇りを感じている」と回答した人は、全体の約80%にのぼります。

日本歯科衛生士会「歯科衛生士の勤務実態調査報告書(令和2年度)」(歯科衛生士としての仕事に対する意識について)
(画像=日本歯科衛生士会「歯科衛生士の勤務実態調査報告書(令和2年度)」(歯科衛生士としての仕事に対する意識について))

一方、同調査によれば「現在の労働条件に満足している人」の割合は、わずか30%程度と低水準。

「歯科衛生士という仕事自体にはやりがいを感じているが、労働条件には満足していない」という層の多さが分かります。

労働環境は仕事のモチベーションにつながる重要な要素です。働きにくい職場環境が歯科衛生士のやる気を削いでしまい、その結果「仕事ができない」という印象を与えている可能性があります。

新卒や2年目なら仕事ができなくて当たり前

歯科衛生士が「即戦力として入ってきたベテランなのか」「新卒や2年目の若手なのか」によっても状況は変わってきます。

歯科衛生士学校では実習はあるものの、卒後間もない人はまだ実務に慣れていないため、医院側で十分な教育体制を整えることが必要です。

また経験者であったとしても、歯科医院によって任される仕事が異なるため、どうしても知識やスキルに差が出てしまうことがあります。

「歯科衛生士ならこれくらいできて当たり前」と自医院のものさしだけで判断するのは避けましょう。

採用面接の段階で慎重に判断しよう

もちろん歯科衛生士の中には、仕事に対するモチベーションが本質的に低い人も一定数存在します。

モチベーションが低いと確かに仕事ができない可能性も高いのですが、特に歯科業界は売り手市場であるため、十分な精査をせずに医院側も安易に採用を決めてしまいがちです。

日本の雇用制度は相対的に労働者の立場が強く、ちょっとしたトラブルだけでは解雇ができません。

採用面接の段階で、自医院に貢献してくれる人材かどうかをしっかりと判断しましょう。

例えば、待遇や職場環境に原因を求めて短期間で転職を繰り返しているような人は要注意です(「チェックポイントと質問例 歯科衛生士面接の掟」)。

歯科衛生士に向いている人の特徴

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(画像=pixta)

他の職種と同様、歯科衛生士という仕事についても人によって向き不向きがあります。

面接や育成をする際は、以下に挙げる適性をチェックしてみましょう。

人と接するのが好きな人

歯科衛生士は歯科医師の診療補助に加えて、予防処置や歯科保健指導において中心的な役割を担います。

患者さまの状況や悩みを正しく把握し、適切なアドバイスやTBIを提供する上では、丁寧なコミュニケーションが不可欠です。

一人の患者さまと長期的に関わることも多いため、信頼関係を築いてメインテナンスのために定期的に通院していただけるように患者さまに働きかけたり、治療以外の話題でも積極的に会話して人間関係を深めたりできる人が向いています。

手先が器用な人

アルジネート印象材の練和や石膏流しといった診療補助業務、スケーリングやSRPなどの施術の精度は、先生方が思っているよりも歯科衛生士ごとに差が出ます。

もちろん、経験や練習の度合いにもよりますが、センスも大きく影響するので、やはり手先が器用で几帳面な人のほうが歯科衛生士として活躍しやすいといえるでしょう。

誰かの役に立ちたいという想いが強い人

歯科衛生士のミッションは、患者さまの歯科疾患の予防および口腔衛生の向上を図ることです。

患者さまの健康に貢献したい、歯科衛生士の仕事を通して社会に価値を与えたいという考えを持っている人は成長意欲も強く、継続して高いパフォーマンスを発揮してくれる傾向にあります。

仕事のできる歯科衛生士を増やすためにできること

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(画像=pixta_)

業務マニュアルを用意する

歯科衛生士は業務の幅が広く、覚えることが多くあります。また、医院によって業務内容やフローが異なるため、経験者であっても転職直後は慣れずに戸惑うことが少なくありません。

まずは業務マニュアルを作成し、歯科衛生士によって仕事の覚えにムラが生じないようにしましょう。

業務マニュアルを作成する最大のメリットは、業務を標準化できることです。

日々の診療業務をきちんとこなせるからといって、人に上手く教えられるとは限りません。

教育にも相応のノウハウと経験が必要なのです。

やるべきことが明確になっていれば、教えるほうも教わるほうも楽です。

新人が質問しやすい雰囲気作りを心掛ける

「先輩はいつも忙しそうで質問しづらく、分からないことをそのままにしてしまう」というのは特に新卒の歯科衛生士からよく聞かれる悩みです。

このままにしておくと、仕事ができない歯科衛生士が誕生してしまいます。

もちろん、これは新人自身の問題でもありますが、医院として質問しやすい雰囲気を作っておくことも重要です。

多くの場合、新人教育は診療の中で行います。

院長や先輩スタッフが前向きに教育しようという姿勢を見せないと、新人は萎縮してしまい、いつまでも仕事ができないままです。

分からないことをそのままにしておくのは、新人にとっても医院側にとっても良くありません。

円滑なコミュニケーションが取れるよう意識しておきましょう。

人事評価制度を整備する

自分の頑張りが正当に評価されなければ、スタッフのモチベーションは下がっていきます。

歯科衛生士の退職理由として常に上位に挙がっているのは「給与・待遇面」です。

スタッフの医院への貢献をしっかりと可視化し、それが給与に反映されるような仕組み作りを目指しましょう。

もちろん、日々の仕事に対して院長がねぎらいや感謝の言葉を掛けることも忘れないようにしてください。

何気ない一言で、スタッフのモチベーションが保たれることも少なくありません。

働きやすい職場環境を整える

ご存じの通り、歯科業界は長期的に売り手市場が続いています。

「歯科衛生士養成教育に関する現状調査(令和2年6月)」(一般社団法人 全国歯科衛生士教育協議会)
(画像=「歯科衛生士養成教育に関する現状調査(令和2年6月)」一般社団法人 全国歯科衛生士教育協議会)

「歯科衛生士養成教育に関する現状調査」(一般社団法人 全国歯科衛生士教育協議会)によれば、2019年の歯科衛生士の有効求人倍率は20.7倍になっています。

つまり「求職者1人当たりに20の求人がある」状態であり、歯科衛生士は働く場所を自分で選ぶことができる立場にあります。

休暇制度や福利厚生、研修システムなど、魅力的な労働環境を整えておかなければ優秀なスタッフは集まりません。

優秀なスタッフを採用した上で、頑張ってくれているスタッフに長く働いてもらうことを目指して、働きやすい職場環境を整えるようにしましょう。

歯科衛生士の離職を防ぐための対策方法

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(画像=pixta)

歯科衛生士は離職率が高いことで知られています。

歯科衛生士の離職理由として上位に挙げられるのは、結婚・出産・育児、給与・待遇への不満、人間関係の問題などです。

ここをしっかり理解して対策を講じることで、育成した人材を流出させないために、離職を防ぐ対策も講じておくことが大切です。

先に紹介したような教育体制や人事評価制度の整備に加えて、

  • 産休・育休を取得できる環境の整備
  • 育児や介護中も働き続けられる柔軟な勤務スタイルの導入(時短勤務、雇用形態の転換など)
  • 院内のコミュニケーションを活性化して人間関係を良好に保つ工夫(食事会や勉強会などの院内イベントの開催、院長やチーフとの定期的なスタッフ面談など)

といった施策を検討して、職場の人間関係や待遇に気を遣いながら、歯科衛生士が働きやすい環境づくりを心掛けましょう。

まとめ

歯科衛生士が思うようなパフォーマンスを発揮してくれない、仕事ができないと感じる原因は、本人のスキルレベルが十分でないケースと、マネジメントが上手くいっていないケースの大きく2つが考えられます。

「うちの歯科衛生士は使えない!」「仕事ができない!」と頭ごなしに否定するのではなく、しっかりと原因を分析し、適切な対処をしていくよう心掛けましょう。

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あきばれ歯科経営 online編集部

歯科衛生士でもある「あきばれホームページ」歯科事業部長の長谷川愛が編集長を務める歯科医院経営情報サイト「あきばれ歯科経営 online」編集部。臨床経験もある歯科医師含めたメンバーで編集部を構成。

2021年5月14日「あきばれ歯科経営 online」正式リリース。全国1,100以上提供している「あきばれホームページ歯科パック」による歯科医院サイト制作・集客のノウハウを元に、歯科医院経営を中心とした歯科医院に関する様々な情報を経営に役立つ観点からお届けする。