歯科医院スタッフの「和」を重んじて、起きる弊害

組織を効率的に運営する上で、リーダーのマネジメント力は不可欠です。

歯科医院の経営の場合、歯科医師として治療の技量はもちろんのこと、経営者としての手腕が求められます。

しかし、多くの歯科医院の院長が「効率的な経営が難しい」と感じています。

この連載では、スタッフと自院を成長させるマネジメント方法のベストプラクティスとして2,000社以上が導入してきた「識学」の理論を解説。

歯科医院経営の成長を阻む「組織のゆがみ」を生む5つの要素について、具体的な事例を紹介するとともに、識学の視点から踏まえた解決策をご提案します。

今回は、組織のゆがみを生む要素の1つである「責任」を取り上げます。

組織のゆがみを生む要素5:責任

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(画像=pixta)

これまで2つの記事では、組織のゆがみを生む5つの要素の内、「当事者意識」「指揮系統」「評価」「育成」という4つの要素を解説してきました。

これら4つの要素に起因して、最終的に責任という要素にゆがみを生じさせることになります。

今回紹介する「責任」は、「責任感」「コミットメント」とも言い換えられます。

「責任」という観点ではどのようなゆがみが生じるのか見ていきましょう。

典型的な例としては、
「うちの幹部がダメだ」
「こんな社会状況だから」
「時間がない」
「患者さんの状況が良くない」
「あの部署が動いてくれない」
というような外部の状況に責任を転嫁してしまうスタッフの発言が挙げられます。

一方で、責任に付帯する権限に対しては、
「責任ばかり背負わされて、権限がそもそも足りない」
「(上司に)言われた通りやっているから」
という形で「自分の責任ではない」という発言から組織のゆがみが生まれやすくなるのです。

ここまで読まれた方の中には、前回までに解説してきた「当事者意識」「指揮系統」「評価」「育成」に関連があると気づかれた方もいることでしょう。

これら4つのゆがみが、最終的に「責任」という要素に大きく影響してくるのです。

実際の失敗例:責任の不履行で起きる不協和音

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(画像=moonrise/stock.adobe.com)

一般的に「従業員の仲が良いことは、円滑なコミュニケーションの大前提と捉えられる」ことが多いと考えられます。

組織を束ねるリーダーの中には「生産性を上げるためには“和”を重んじたマネジメントが重要」と考える人もいらっしゃいます。

そして、生産性を上げるための従業員のモチベーションを高める取り組みとして、リーダーが率先して部下のモチベーションの向上に努める動きも見られます。

しかし、そうした取り組みが本当に必要なことなのかを今一度考えてほしいのです。

「当事者意識」や「育成」の要素解説でも述べたように、単に従業員に寄り添うだけのマネジメントは、従業員の自主的な成長を阻んだり、育成システムのゆがみを生むことにもつながってしまいます。

「評価」の要素解説で触れたように、不明確な目標や評価基準では、スタッフの役割や責任があいまいになってしまいます。

そして、自分の役割に対する責任感が薄れ、求められる役割の業務がおろそかになります。

結果、各人の責任の不履行によって組織内で不協和音が生まれ、組織全体のパフォーマンスが著しく低下してしまいます。

さらに、「和」を重視した組織内では「協力してやりなさい」「気づいた方がやりなさい」「ケース・バイ・ケースで柔軟に対応しなさい」といった風潮も多く見られます。

しかし、そうした「仲良くすること」を目的化してしまうと、さまざまな弊害が起きてしまいます。

識学的な見解:「感情を排したマネジメント」を徹底する

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(画像=Thitiphat/stock.adobe.com)

識学では「感情を排したマネジメントの実践」を推奨し、組織を運営する上で遵守すべきルールには「感情を挟まない」ことを説いています。

感情に引きずられルールの例外を作ってしまうと、「あの人は許されているのに、なぜ自分はダメなのか」という不満が起き、チームや組織は脆くなるので十分注意が必要です。

そもそも職場とは、和がなくてもそれぞれが業務の役割の遂行に専念する場所であるべきです。

学校やサークルなどの仲良し集団ではありません。決して心の寂しさを埋める場所ではないことをしっかりと認識させることが必要です。

組織のリーダーには、部下が自分の役割を果たすための環境作りに注力することが求められます。

ある集団が団結するのは、それぞれが与えられた責任を果たしつつ、共通の目標に向かう過程を通じて徐々に信頼関係を構築するのが自然の状態ではないです。

言い換えると、「和」を形成することで生産性を高めるのではなく、生産性を高めた結果として「和」が形成されるのが正しい順番なのです。

実際に「常勝集団」と呼ばれる組織の多くが、個々人がそれぞれの責任範囲を遂行することで集団の価値を高めているという特徴を持っています。

例えば、高校野球の甲子園常連の監督は、選手たちに「仲良くしろ」という指導はしていません。

厳しい練習を乗り越えた先に糧を得ることができ、その結果として良好な人間関係が生まれていると捉えるべきです。

私たち識学のコンサルタントは、人間関係が良いこと自体を否定しているわけではありません。

ただ、一見ギスギスしているように見える職場でも、それぞれが自分の責任を果たすために必要なコミュニケーションが取れていれば、組織として十分なパフォーマンスを発揮できると考えています。

第3回まとめ

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(画像=mikitea/stock.adobe.com)

ここまで「組織のゆがみを生じさせる5つの要素」について、実際の失敗例を踏まえながら解説してきました。

少子高齢社会を迎え、コンビニよりも歯科医院の数が多いと言われています。

その中で厳しい競争に勝ち残るためには、自院のマネジメント力を強化することは必要不可欠です。

また、昨今の新型コロナウイルスの影響によって、これまでとは違う「新しい常態(ニューノーマル)」な社会が到来し、今後経営環境はさらに目まぐるしく変化すると推測されます。

お気軽にご相談ください!

院長をはじめとした読者の皆さんは、今回の相談についてどう感じたでしょうか? 識学では、組織のゆがみを生じさせる要素を理論的に解決する方法の実践をコンサルタントが支援しています。少しでも興味を持たれた方は、ぜひ一度識学までご相談ください。

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冨樫 篤史

株式会社識学 品質管理部長

2002年、立教大学経済学部を卒業後、株式会社ジェイエイシージャパン(現ジェイエイシーリクルートメント)に入社。おもに幹部クラスの人材斡旋や企業の課題解決を提案。

2015年10月に識学に入社。大阪支店の支店長などを経て、現在は品質管理部長としてコンサルティング品質の標準化とレベルアップの責任者として従事。

今回、歯科医院経営における組織マネジメントの課題を「識学」で解決してきた実績を踏まえ、当サイトにも寄稿頂く。