歯科医院は開業する際に多額の初期投資が必要で、運転資金も少なくないため、借金が膨らみやすい事業モデルだといえます。
歯科医院開業後の資金回収がうまくいかず、借金まみれで悩む院長もいるのではないでしょうか。
この記事では、歯科医院を開業した院長が借金まみれになりやすいとされる理由をお伝えしています。
さらに、具体的な原因と防止策についても解説していますので、歯科医院運営の参考にしてください。
歯科開業医は借金まみれになりやすい?
歯科医院は、注意していないと借金が膨らみやすいビジネスモデルとされており、主な理由として次の3点が挙げられます。
- 初期投資・運転資金が膨らみやすい
- 歯科医院の数が多く競争が激しい
- 保険診療のため入金が遅くなりやすい
歯科開業には設備投資が欠かせないため、開業時に多額の借り入れが必要となります。
さらに運営にかかるコストが高いにもかかわらず、競合数が多いことで患者獲得が難しいことも理由の1つでしょう。
保険診療では支払いが先になるため、入金がずれ込む点も考慮しなければなりません。
歯科開業医が借金まみれになる3つの原因
歯科開業医が借金まみれになりやすい具体的な原因として、「返済計画」「集客(集患)」「キャッシュフロー」の3つが挙げられます。それぞれについて解説しましょう。
開業費の返済計画が甘かった
1つ目の原因は返済計画の甘さです。
開業費用が大きすぎたために借金が重なり、返済できないというケースが考えられます。
歯科医院の開業=初期費用にはおよそ5,000万円以上が必要とされており、以下は主な費用例です。
- テナント費用:約500万円
- 内装工事費:約1,900万円
- 医療機器:約1,500万円
- 広告宣伝費:約200万円
開業費用は院長次第で変動するため、開業時に必要な設備かどうかの判断が重要となります。
また、現実的な返済計画の作成も不可欠です。
1日の患者数や1人あたりの単価など細かい部分まで考え、業績悪化などのリスクも考慮して返済計画を立てなければなりません。
開業しても返済が滞っては運営を継続できない可能性があります。
うまく集客(集患)できなかった
2つ目は集客のノウハウがなく、リピーターを生む構造も作れずに患者数が減ってしまうという原因です。
医療に集客は必要ないと考える院長も少なくないかもしれませんが、競合医院が多い現代では患者獲得のための競争は激化しています。
広告の活用や、Webサイトを通した情報発信などマーケティングに力を注ぎ、新患獲得ができる環境を整えることが重要です。
また、治療技術の向上やコンセプトといった面において、他院との差別化を図ることも必要な要素といえます。
さらに、スタッフ教育やスキルアップ体制を充実させることで、質の高いサービスが提供できるようになると患者の囲い込みにも効果的です。
自然と口コミが集まり集客にもつながるでしょう。
キャッシュフローが悪化した
最後にキャッシュフローの管理がうまくできず、手元資金が減ってしまうという原因が挙げられます。
キャッシュフローとは資金の流れを表しますが、財務会計上で利益が出ていても手元資金が多いとは限りません。
「利益」とは会計上の儲けであり、実際の資金とは異なるため注意が必要です。
この点を勘違いしていると、会計上は黒字でも経営が破綻する可能性があります。
歯科医院では設備費や人件費といった固定費に加え、材料費、消耗品費など変動費の支払いも毎月発生します。
さらに保険診療では会計上は売上が発生しますが、実際に入金されるのは2ヶ月後です。手元資金をしっかりと管理することが、歯科医院を経営するうえで重要な指標といえます。
歯科開業医が借金まみれにならないための防止策
歯科開業医が借金まみれにならないためには、どのような点に注意するとよいのでしょうか。ここでは4つの防止策について解説します。
必要な運転資金を確保する
キャッシュフローの悪化に備え、ある程度の運転資金を用意しておきましょう。
6ヶ月程度の運転資金として約1,200万~1,300万円が目安です。
開業してから半年〜1年ほど経てば徐々に患者数が増えていく可能性はありますが、開業後しばらくは収入が安定しないと考えられます。
経営していくなかで「来院数が思うように伸びない」あるいは「保険診療の入金が数ヶ月先で手元資金がない」という状況に陥るかもしれません。
しかし、固定費などの支払いは毎月発生します。例えば、次のような費用です。
- 人件費
- 光熱費
- 設備費
- テナント料
- 機器リース料
運転資金のなかには、院長の生活費も含まれます。
経営悪化などさまざまなリスクを考慮して、運転資金を準備していれば不足を補い、資金繰りにも悩みません。
無駄なコストをカットする
不要な支出のカットや節税なども効果的な方法です。
経費が増えれば所得税などの税金は減りますが、増えやすい支出を定期的に見直すことでコストが削減され、収支バランスも安定します。
例えば、次のような点を意識してみましょう。
- 材料費
- 在庫管理の実施
- システムの導入
変動費の多くを占める材料費のコストカットは効果的です。
ただし、品質低下による治療への影響は避ける必要があるため、一括割引購入や仕入先の変更などを検討しましょう。
加えて在庫管理を徹底すると誤発注や不良在庫が減り、無駄を省けます。
電子カルテや予約管理システムといったシステムを導入することで業務効率化につながり、人件費削減や患者の満足度向上にもつながるでしょう。
集客の工夫をする
広告・宣伝など集客についても工夫しましょう。
厚生労働省「う蝕罹患の現状」で、2016年時点の「う蝕の処置状況の経年変化(有病者等の割合)」を見ると、歯科医院のメインターゲットと考えられる「処置歯・未処置歯を併有する者」「未処置の者」の割合が年代別に記されており、全年齢では約30%が該当しています。
商圏分析の際、商圏人口や年齢構成から潜在ターゲット層の規模感を計算しておくことで、集客見込みを立てることができ、収益計算や広告配分の最適化につながるでしょう。
また近年はう蝕の罹患率が激減しており、集客においては「う蝕治療」だけでなく「予防」や「矯正」「審美治療」といった患者・地域のニーズに合わせた柔軟な姿勢が求められています。
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優秀な人材を確保する
歯科業界は慢性的な人手不足で、人材確保は重要な課題です。
特に歯科衛生士は「20の歯科医院が1人の新卒を奪い合う」状況といわれており、歯科助手についても従事者は減少しています。
歯科衛生士学校への求人や歯科医師会による人材紹介サービスのほか、自院ホームページに求人専用サイトを作成するなどして人材を確保しましょう。異業種からの転職希望者を狙うのも1つの方法です。
給与・待遇面の改善はもちろんですが、女性の割合が高い職種であるため勤務形態・勤務時間などを工夫し、結婚・出産・子育てなどライフステージの変化に対応できる職場環境を整えることも必要といえます。
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自由診療にも力を入れる
虫歯の罹患率が激減している状況について前述しましたが、単価アップのために自由診療による集客にも力を入れましょう。
近年は歯科予防意識の拡大に加え、より良い治療を望む患者が多い傾向です。
「マウスピース矯正」「セラミック治療」など口腔ケアへの積極的なアプローチや、審美治療を求める患者も増えています。
診療報酬の減少、金パラの価格高騰といった問題を考えても診療スタイルの見直しが必要といえるでしょう。
自由診療をアピールする際はメリットを伝えることが大切です。
ホームページやポスターの掲示などを活用して、保険診療以外の選択肢があること、自由診療の価値について積極的に情報提供していきましょう。
まとめ
歯科開業医は多額の設備投資が必要となり、開業当初は集客(集患)のノウハウも乏しいことから資金繰りがうまくいかず、対策しなければ借金まみれになりやすいビジネスといえます。
ただし、適度な収支バランスを保ち、集客・自由診療に力を入れることで経営破綻を回避することは可能です。
現状の課題や患者のニーズを正しく捉え、対策を講じながら安定した経営を実現していきましょう。
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歯科衛生士でもある「あきばれホームページ」歯科事業部長の長谷川愛が編集長を務める歯科医院経営情報サイト「あきばれ歯科経営 online」編集部。臨床経験もある歯科医師含めたメンバーで編集部を構成。
2021年5月14日「あきばれ歯科経営 online」正式リリース。全国1,300以上提供している「あきばれホームページ歯科パック」による歯科医院サイト制作・集客のノウハウを元に、歯科医院経営を中心とした歯科医院に関する様々な情報を経営に役立つ観点からお届けする。