レセプト点検のコツを解説 返戻を抑えるポイント

レセプトの点検業務はルールが細かく、毎月処理が面倒だと感じている先生も多いのではないでしょうか。

しっかり点検したつもりで提出しても、思わぬところで返戻になってしまうと、ただでさえ日々の診療で忙しい時間がさらに圧迫されてしまいます。

この記事では、レセプト点検のコツやミスへの対策をご紹介します。返戻をどうにか減らしたいと悩む方は参考にしてみてください。

レセプト点検を徹底すべき理由

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(画像=wutzkoh/stock.adobe.com)

レセプト点検の注意点:返戻対応の手間や減点・請求漏れが発生する

基本的に返戻の理由は、以下の2点です。

・患者さまの氏名や性別、被保険者番号の間違いなどの「事務処理上の不備」

・病名や治療部位の記載ミスなどの「診療内容の疑義照会」

きちんと確認しないと二度手間になったり、訂正が終わるまでその分は入金されなかったりと歯科医院の収入にも関わってくるので注意が必要です。

月ごとのチェックに加え、毎日の業務の中で入力ミスがないかどうか確認を徹底することが返戻を防ぐことにつながります。

レセプト点検の注意点:厚生局は保険医療機関の指導・監査を強化している

近年、厚生局は保健医療期間の指導や監査を強化しているのをご存知でしょうか。

指導内容はその医療機関の状況によって変わりますが、患者さまからの情報提供があったり、一件当たりの点数が高い状況が続いたりした場合には、各都道府県や厚生局から個別指導が入ることがあります。

2019年においては、医科の保険医療機関に対する個別指導は1,639件、歯科については1,348件となっています。

一方、診療所数に対する割合で見れば、医科は約1.5%(1,639÷102,616)、歯科は約2%(1,348÷68,500)。

個別指導が入る割合は、実は医科よりも歯科のほうが多いのが現状なのです。

また、診療内容やレセプトに不正や著しい不当があると監査が入り、その結果によっては保健医療機関取り消しなどの厳しい処分を受ける恐れもあることを覚えておきましょう。

レセプト作成・入力の基本的な流れ

PC前での打ち合わせ風景
(画像=Monet/stock.adobe.com)

レセコン(レセプトコンピューター)に診療情報を入力

最近ではレセプト作成は手書きではなく、受付での会計業務と並行して診療情報を「レセコン(レセプトコンピューター)」に入力し、オンライン請求するのが原則です。

製品によって細かい部分は異なりますが、基本的に診療内容に応じたコードを入力することで、診療報酬点数が自動的に計算されるようになっているため、特別な知識がなくても入力だけなら簡単です。

レセプトの内容はカルテと一致しているのが鉄則ですので、きちんと確認しましょう。

レセプトを作成・出力する

1歯科医院につき、1人の患者さまに対して1か月分の診療情報を1枚のレセプトにまとめて記載するのが基本です。

レセコンが1ヶ月間の診療内容・診療報酬を自動的に集計して出力してくれるため、こちらも作業自体はさほど難しくありません。

ただし、患者さまの加入する医療保険の保険者が同一月中に替わった場合は、保険者ごとにレセプトを作成しなければならない点に注意が必要です。

例えば、企業に勤務して社会保険に加入していた患者さまが、月の途中で退職して国民健康保険に移行した場合は、全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ)など勤務先の健康保険組合と、国民健康保険組合に分けてレセプトを作成します。

作成したレセプトを点検する

入力時にチェックを徹底するのはもちろん、作成・出力したレセプトも改めて見直して点検します。

レセコンで自動的に計算してくれるとは言え、そもそも入力内容が間違っている可能性もあるからです。

診療情報のレセコンへの入力自体はそれほど難しくありませんが、正確なレセプト作成には相応の知識や経験が必要です。

経験の浅いスタッフが入力を担当した場合は、ベテランのスタッフや受付のチーフがチェックしましょう。

歯科医師によるチェック

保険診療を行う上では、歯科医師は療養担当規則の内容を遵守しなければなりません。この中で、

「保険医は、その行つた診療に関する情報の提供等について、保険医療機関が行う療養の給付に関する費用の請求が適正なものとなるよう努めなければならない」(第23条の2)

と定められています。

保険医は、歯科助手や受付任せにせず、主体的にレセプト業務に携わり、ミスや不正のないよう努めることが求められるのです。

院長自身も作成したレセプトをしっかり点検するとともに、もとになったカルテの内容にも問題がないかチェックします。

審査支払機関にレセプトを提出する

作成したレセプトは、前月分を翌月10日までに以下の審査支払機関に提出します。

・社会保険:社会保険診療報酬支払基金

・国民健康保険:国民健康保険団体連合会

審査の結果、問題がなければ、保険者から預かった資金をもとに審査支払機関が医療機関に診療報酬を支払います。

審査の結果不備があった場合は、査定(減額・減点)または返戻され、返戻された場合は修正して再提出しなければなりません。

保険者ではなく、審査支払機関という独立した第三者機関が審査・支払業務を担っているのは、公正性を保ち、審査~支払いまでのプロセスを迅速にするためです。

レセプト点検でチェックすべきポイント

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(画像=Thitiphat/stock.adobe.com)

レセプト点検の注意点:レセコンのエラー表示をきちんと見る

レセコンのシステムには保険点数や算定ルールが組み込まれており、ルールに違反した入力にはエラーが出るようになっています。

入力時にエラーが生じた場合は、メッセージを無視せずにエラー内容を確認して入力内容をその都度訂正しましょう。

小さな見落としの積み重ねが、月次チェックでの大量の訂正や返戻につながってしまうので、普段の入力から注意深く行うことが大切です。

レセプト点検の注意点:病名と治療部位が正しく入力されているか?

心当たりがある先生も多いかと思いますが、レセプトのミスとして代表的なものに病名や治療部位の誤入力が挙げられます。

歯科治療は長引くことも多く、病名や治療部位が間違ったままだと訂正に大変な手間がかかってしまうので気を付けましょう。

また、治療の過程が複雑になるとミスが起きやすいので注意が必要です。

例えば、SRPが終わりP検(歯周病検査)も済ませた後、歯石が残っていて再度SRPを行った場合には、もう一度P検をしなくては次の治療に進めません。

ちなみに歯冠修復前後の歯周治療は個別指導で指摘されやすいポイントです。

根管治療などで長引くときや、同時並行で治療を進めているときには特に注意が必要です。疑い病名での投薬がないかもチェックしましょう。

レセプト点検の注意点:過剰請求されていないか?

レセプト点検のときには、過剰請求になってしまっていないか気を付けて見ることも大切です。

自費診療のみにもかかわらず再診料を算定したり、同日・同月算定不可のものを請求していたりすると、過剰請求となってしまいます。

例えば、インレーセット後の抜髄や、FMC除去とコア除去の同時算定はできませんので注意しましょう。

また、歯科医学的に不適切あるいは必要に乏しいと思われる処置があった場合は、個別指導で指摘される恐れがあります(歯周組織検査や歯周治療、チェックバイト検査、うがい薬の処方など)。

レセプト点検の精度を高める方法

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(画像=polkadot/stock.adobe.com)

ダブルチェックする

レセプトは複数人で重ねてチェックを行うことでミスを軽減できます。

例えば、歯科助手が入力した後に歯科医師や歯科衛生士が再度チェックするのはもちろん、午前や午後の診療の最後など、区切りの良いタイミングで入力者がもう一度確認しても効果的です。

チェックが後日になると記憶違いが起こることもあるので、入力からはなるべく時間を置かないほうがよいでしょう。

また、紙のほうが見やすくミスが減ったという人もいるので、必要に応じてプリントアウトしてチェックすることも検討しましょう。

オンライン請求に切り替える

オンライン請求に切り替えるのも一つの手です。

オンライン請求ならば、受付時間の延長により時間の余裕ができたり、返戻となるエラーを事前にチェックできたりするため、レセプトのミスのリスクを減らすことができます。

原則電子レセプトが義務付けられている現在では、歯科でも90%以上が対応していますが、そのうち70%以上が未だ電子媒体で申請しているのが現状です。

レセプト業務をより効率化したいと考えているなら、オンライン請求への移行を検討してみましょう。

スタッフのスキルアップや資格取得を奨励する

歯科助手など、レセプト業務を任せるスタッフのスキルアップも重要です。

自院にレセプトを教える時間や環境がないのなら、外部研修を受講したり、歯科医療事務関連の資格取得を支援したりしてもよいでしょう。

レセプト業務に限らず、人材育成への投資は設備投資と同等以上の費用対効果を生みます。

レセプト業務の代行を依頼する

こまめなレセプト点検やスタッフの育成に割く時間やコストが足りない、スタッフがレセプト業務に積極的でないという場合には、思いきってレセプト業務の代行を依頼してしまいましょう。

院長やスタッフ達の負担を減らせるのはもちろん、プロに任せることで安心して他の業務に集中できます。

点検機能が充実したレセコンを導入する

レセコンの中には、ミスを軽減して正しいレセプトをスムーズに作成できるよう、入力アシストや点検・チェック機能が搭載されている製品もあります。

例えば、株式会社ノーザの提供する「WiseStaff」は、保険請求ルールに則ったチェック機能で正確なレセプトの作成を手助けしてくれるだけでなく、保険請求に精通した専門スタッフが電話や訪問でサポートしてくれます。

また、メディア株式会社の「電子カルテシステムWith」は、部位・病名・処置を照合し、過去の診療情報も参照しながら入力内容が正しいか点検してくれたり、厚労省の記録条件に合致しないレセプトエラーをチェックしてくれたりする機能を搭載しています。

こうした点検・入力アシスト機能はもちろん、カルテ入力や操作のしやすさもスムーズな業務進行とミスの軽減につながります。

比較検討して自医院に合ったレセコンを選択しましょう。

まとめ

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(画像=Sebastian Duda/stock.adobe.com)

医院の業務の中でも重要なレセプト点検。ルールが細かく、神経を使う業務ですが、ポイントを押さえてチェックに当たれば返戻を減らすことができます。

入力ミスや過剰請求になってしまいがちな項目を把握するだけでなく、より精度を高めて効率化できる仕組みを作ることも重要です。

引用元:
厚生労働省 医療施設調査(令和元年度) 参照診療所数
厚生労働省 令和元年度における保険医療機関等の指導・監査等の実施状況 参照個別指導件数

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あきばれ歯科経営 online編集部

歯科衛生士でもある「あきばれホームページ」歯科事業部長の長谷川愛が編集長を務める歯科医院経営情報サイト「あきばれ歯科経営 online」編集部。臨床経験もある歯科医師含めたメンバーで編集部を構成。

2021年5月14日「あきばれ歯科経営 online」正式リリース。全国1,100以上提供している「あきばれホームページ歯科パック」による歯科医院サイト制作・集客のノウハウを元に、歯科医院経営を中心とした歯科医院に関する様々な情報を経営に役立つ観点からお届けする。