歯科医院や歯科医師が注意すべきパワハラと受け取られかねない言動とは

近年、さまざまな職場でパワーハラスメント、いわゆる「パワハラ」の発生が増加しているといわれています。歯科業界も決して例外ではないため、スタッフの退職や損害賠償といったトラブルを未然に防ぐためには、パワハラに関して正しい知識を身に付けることが大切です。

そこで今回は、「歯科医師によるパワハラ」の分かりやすい事例を交えつつ、注意したい言動について解説します。

歯科医院で気を付けたい「歯科医師のパワハラの定義」とは?

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(画像=AdobeStock_248420494_buritora_600)

厚生労働省によると、パワハラの概念は以下のように定義されています。

「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」

歯科医院におけるパワハラの典型例は、院長や歯科医師からスタッフへの以下のような行為が当てはまります。

  • 身体的な攻撃(暴行・傷害など)
  • 精神的な攻撃(脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言など)
  • 人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視など)
  • 過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)
  • 過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
  • 個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)

上記はあくまで一例なので、パワハラに該当する行為は他にもあることを覚えておきましょう。

パワハラと見なされる恐れがある歯科医師の言動

それでは具体的にはどのような発言が、パワハラと捉えられるのでしょうか。パワハラを避けるためには、以下のような言動に注意しましょう。

大声で怒鳴る・暴言を吐く

本人が委縮するほど大声で怒鳴ったり、他のスタッフが見ている前で執拗に叱責したりすることは、パワハラの観点から考えて望ましくありません。業務上どうしても叱らなければならないケースもあるかと思いますが、あくまで間違った行為や認識を正すことが目的なので、話をする場所や言い方には配慮する必要があります。

また、スタッフの家族を侮辱したり、人格や存在そのものを否定したりするなど、尊厳を著しく傷つけるような言動も当然NGです。

パワハラ認定された事例とは

具体的な事例として、三重県桑名市総合医療センターでは、部下の歯科衛生士4人に対して「どうして、こんなこともできないのか」と暴言を吐いて精神的な苦痛を与えたとして、部長であった歯科医師が処分されています。こういった行為は、当然ながら「歯科医師による部下へのパワハラ」と認定されます。

度を超えた長時間労働の強要・基本給の減額と事例

36協定の上限時間を超えた心身に支障をきたすほどの過重労働や、不当な基本給の減額などもパワハラになり得ます。

福岡県大牟田市の歯科医院で歯科医師によるパワハラによって勤務していた歯科技工士が自殺したとされる事例では、院長による日常的な叱責、基本給を月10万円に引き下げる、亡くなる直前の残業時間が月193時間といった状況から労災認定されると同時に、遺族からの訴えで損害賠償請求が認められています。

業務のスムーズな遂行を妨害する

歯科医師による指示が求められている場面で十分な情報を伝えなかったり、本人がやったことのない業務を教えもせずにいきなり命じたりするなど、スタッフの業務を意図的に妨害するような言動はNGです。

こうした行為によって業務が妨げられることは容易に想像がつくにもかかわらず、その上でスタッフを叱責するようなことも当然ながら望ましくありません。

このような言動はスタッフ個人を追い詰めるだけではなく、歯科医院における業務効率も悪化させるため、全くもって合理性がないといえるでしょう。

院内でのいじめに加担する・放置する

スタッフ間で起こっているいじめを院長が放置することは、使用者・管理者としての責任を果たしていないことと同義なので、パワハラと見なされる可能性があります。言わずもがなではありますが、院長自らいじめに加担することもNGです。院長はいかなる状況でも、どのような理由があったとしても、医院で働くスタッフの安全に配慮する義務があります。

また、スタッフ同士で何か問題が起こった際に、勤務歴の長いスタッフの肩を持ち、新人が働きにくい雰囲気を作るような行為も望ましくありません。

パワハラを軽視することで起こるデメリット

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(画像=AdobeStock_248420165_buritora_600_400)

パワハラは歯科医院に以下のようなデメリットをもたらすので、決して軽視してはいけません。

スタッフがすぐ辞めてしまう

歯科医療従事者の退職理由として、給与・待遇と並んで上位に挙がっているのが「職場での人間関係」です。特に歯科衛生士については、先輩・同僚より院長との人間関係が問題になっているという調査結果も出ています。

日常的にパワハラが行われているとスタッフが辞めてしまう可能性も高くなるので、歯科医院の業務にも悪影響が及びかねません。昨今、歯科業界は人材不足に陥っており、スタッフの補充は容易ではありません。大切な人材の流出を避けるためもパワハラは絶対に避けるべきです。

スタッフのモチベーションや患者さま満足度が下がる

院長によるパワハラ行為が横行していると、対象になっているスタッフ本人はもちろん、他のスタッフ全員のモチベーションも下がってしまう可能性があります。これは治療・サービスの品質低下を招くため、結果として患者さま満足度の低下にもつながりかねません。患者さまの目の前でスタッフを怒鳴ったり、高慢な態度をとったりすることはもってのほかです。

患者さま満足度は歯科医院の売上にも直結するポイントなので、正当な理由によってスタッフを叱る必要があるときはTPOを意識しましょう。

損害賠償など法的リスクも

院長のパワハラで退職に追い込まれた、うつ病やパニック障害など精神疾患を患ったといった場合、スタッフから訴えられる恐れもあります。実際、損害賠償請求が認められたケースも複数存在するため、パワハラには法的リスクがあることも覚えておきましょう。

もし損賠賠償の支払いを命じられた場合、数百万~数千万円クラスの経済的損失が発生する恐れもあるのです。また、社会的信用が失墜してその後の医院経営が難しくなるなど、取り返しのつかない事態に陥る可能性があります。

歯科医院ではセクハラ・マタハラにも注意

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(画像=AdobeStock_131537168_taka_600_400)

歯科衛生士や歯科助手として働いている人のほとんどは女性なので、歯科医師はセクハラ・マタハラにも注意する必要があります。

身体に触れる・性的な関係を迫るといった直接的な行為はもちろん、何気ない言動にも配慮しなければなりません。性的な話題を口にしたり、結婚や出産について言及したりするだけでも、相手が不快に思えばセクハラ・マタハラになってしまうのです。一昔前ではよしとされていた言動でも、このご時世では大きな問題に発展する可能性があるため注意しましょう。

まとめ

歯科医院を円滑に経営するためには、院長や勤務する歯科医師がパワハラに関する知識を身に付けることも大切です。院長自身にその気がなくても、パワハラと見なされるような行為をすれば、スタッフの退職や訴訟といったトラブルに発展する可能性があります。

直接的な行為や言動だけではなく、日頃の態度やしぐさ、院内の雰囲気によってもパワハラは成立するため、この機会に一度見直してみましょう。

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