歯科医院経営にも必須 キャッシュフロー経営とは

本記事では、まず歯科医院(歯科診療所)がキャッシュフロー経営を意識する重要性について解説します。

その後に具体的なキャッシュフローの計算方法やキャッシュフローの改善で意識したいポイントについても詳しく説明していきます。

歯科医院がキャッシュフローを意識する重要性

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(画像=pixta)

歯科医院の経営はキャッシュフローを意識することが重要といえます。

なぜなら、財務会計上は利益が出ていても、手元に残るキャッシュが少ない場合があり、医院経営が継続できなくなるケースもあるからです。

例えば、売掛金が多くて入金時期が遅れる、かつ仕入れや設備のリース料金といった支払い費用は毎月決まった時期に支払わなければならない、といったケースがあります。

このような場合は手元に残るキャッシュが少なくなりがちでしょう。

特に歯科医院は、開業時に設備投資などで多額の支出があり、その後もリース料、材料費、テナント料やスタッフの人件費といった変動費・固定費が発生しますし、経費に含まれない支出として、10万円以上の資産の購入(減価償却対象のもの)、借入金の返済、税金の支払い、個人の生活費もあります。

そうした中で歯科医院の経営を安定させるには、キャッシュの流れを健全化するキャッシュフロー経営が重要となるのです。

キャッシュフローを意識していれば資金繰りが楽になり、必要な時に思い切った投資もできるでしょう。

歯科医院がキャッシュフローを計算する方法

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(画像=pixta)

歯科医院のキャッシュフローの計算方法は、キャッシュフロー項目の洗い出しを行った後、営業、投資、財務のジャンルに分けて算出し、最後に合計額を計算します。

それぞれ見ていきましょう。

キャッシュフロー項目の洗い出し

まずはキャッシュフロー項目を洗い出します。

キャッシュフロー項目とは会計上の処理とは異なり、「キャッシュの動きが発生した項目」を意味するため、歯科医院のお金の実態を把握するうえで極めて有用です。

例えば借入金が増えると手元にキャッシュが増えるのでキャッシュフロー項目に計上しますが、会計上の損益計算書には記載しません。

また損益計算書上は赤字でも、手元にキャッシュが残っている場合もあります。

このような損益計算書では把握が難しい「お金の流れ」の記録を行うのがキャッシュフロー計算書です。

つまり、通常の財務会計ではなく、あくまでもキャッシュの動きを追うという点がキャッシュフロー計算書のポイントといえます。

営業キャッシュフローの計算

営業キャッシュフローとは、歯科治療などの本業によるお金の動きを表します。

設備などの「減価償却費」は会計上、経費になりますが、実際に現金を支出しているわけではないので、キャッシュフロー計算の際は足し戻す必要があります。

「売上債権」の増加は売上が発生していることを示すので会計上は好ましいことのように見えますが、実際には入金が遅れてやってくるので、現金の流出と同様に考えます。

投資キャッシュフロー・財務キャッシュフローに含まれないお金の流れも営業キャッシュフローに分類され、法人税の支払いなども含まれます。

また、個人立の歯科医院の場合、個人の所得税・生活費も実質的な支出として計算してみてもよいでしょう。

投資キャッシュフローの計算

投資キャッシュフローとは、医療機器や歯科医院の設備、建物などの資産に関するお金の動きを表します。

例えば高額な医療機器を購入した場合、会計上は減価償却費として数年にわたり分割計上しますが、実際には購入時に多額の支出が発生しています。

積極的に医療機器などに投資している歯科医院の場合、投資キャッシュフローの数字がマイナスになることもありますが、将来的な医業収益のために必要な支出であれば悪い支出とは限りません。

こういった設備投資などのキャッシュフローの流れを把握することで、自院に残る手元現金が分かりやすくなります。

なお、営業キャッシュフローから投資キャッシュフローを差し引いた最終的に手元に残るお金のことを「フリーキャッシュフロー」と呼び、これが多ければキャッシュが創出できている状態です。

財務キャッシュフローの計算

財務キャッシュフローには、一般的な企業であれば投資家からの出資も含まれますが、歯科医院の経営においては主に借入金関係を表します。

短期的な借入、長期的な借入ともに財務キャッシュフローに計上します。

大規模な医療機器を購入する場合の借入、開業・リフォーム工事を行う場合の借入などは、会計上は損益計算書には計上しませんが、実際には多額の入金が発生しているので、財務キャッシュフローに含みます。

また、元本返済する際も、会計上は損益計算書には計上しませんが、実際には支出が発生しているので、財務キャッシュフローとして計上します。

最終的な財務キャッシュフローがプラスになれば、借入金が返済額よりも多い状態です。

期間内の合計キャッシュフローの計算

営業キャッシュフロー、投資キャッシュフロー、財務キャッシュフローを一通り洗い出した後、一定の期間分をまとめて合計キャッシュフローを算出します。

その結果、合計キャッシュフローがプラスなら問題ありませんが、プラスマイナスゼロ、もしくはマイナスの場合は支出過多に陥る危険があるので注意が必要です。

このように損益計算書や貸借対照表では把握できない「お金の動き」を把握できるのがキャッシュフロー計算書を作成するメリットといえるでしょう。

歯科医院のキャッシュフローの目安と実際の計算例

ここまで歯科医院のキャッシュフローについて解説しましたが、ここからキャッシュフローのサンプルを用いながら、各損益項目の目安と計算例を見ていきます。

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(画像=あきばれ歯科経営online編集部)

営業収入

まずは営業収入(医業収益)のサンプルです。営業収入は歯科医院に入ってくるお金なのでキャッシュインが増加し、キャッシュフローもプラスになります。

歯科医師経営 キャッシュフロー
(画像=あきばれ経営歯科online)

<計算項目>

・保険診療収益

・労災等診療収益

・その他の診療収益(自由診療収益が含まれる)

・その他の医業収益

<計算式> 営業収入のキャッシュインの計算式は次の通りです。

営業収入(4,000)=保険診療収益(3,500)+労災等診療収益(50)+その他の診療収益(400)+その他の医業収益(50)

その結果、営業収入4,000万円がキャッシュフローに計上されます。

<目安となる水準> 医療経済実態調査によると、個人経営の平均的な営業収入は4,400万円です。

営業費用

営業費用(医業費用)は歯科医院から出ていくお金なので、キャッシュアウトが増加し、合計キャッシュフローは減少します。

歯科医師経営 キャッシュフロー
(画像=あきばれ歯科経営online)

<計算項目>

・給与費

・医薬品費

・歯科材料費

・委託費

・設備・医療機器賃借料

・その他営業費用

<計算式> 営業費用のキャッシュアウトの計算式は次の通りです。

営業費用(2,750)

=給与費(1,300)

+医薬品費(50)

+歯科材料費(300)

+委託費(400)

+設備・医療機器賃借料(100)

+その他営業費用(600)

その結果、計上済みキャッシュフローの4,000万円から、営業費用2,750万円が差し引かれ、キャシュフローは1,250万円に減少します。

<目安となる水準> 医療経済実態調査によると、個人経営の平均的な営業費用は2,900万円です。

減価償却費

減価償却費は実際にキャッシュが流出しているわけではないため足し戻します。

歯科医師経営キャッシュフロー
(画像=あきばれ歯科経営online)

<計算項目>

  • 建物減価償却費
  • 医療機器減価償却費

<計算式> 減価償却費(250)がそのままキャッシュインとなるため、計上済みキャッシュフロー1,250万円に加算され、キャッシュフローは1,500万円に増加します。計算式は次の通りです。

減価償却費(250)

=建物減価償却費+医療機器減価償却費

<目安となる水準> 医療経済実態調査によると、個人経営の平均的な減価償却費は270万円です。

営業債権・債務

営業債務にあたる「買掛金」は、業者からの歯科材料などのツケ払いです。

歯科医師経営 キャッシュフロー
(画像=歯科医師経営 キャッシュフロー)

営業債権にあたる「売掛金」については、歯科医院は基本的にツケ商売ではないため除外します。

歯科医師経営 キャッシュフロー
(画像=あきばれ歯科経営online)

<計算項目>

  • 買掛金
  • 売掛金

<計算式> 営業債権である買掛金(50)がキャッシュインとなるため、計上済みキャッシュフロー1,500万円に加算され、キャッシュフローは1,550万円に増加します。

営業債権・債務(50)

=買掛金(50)-売掛金(0)

設備投資

医療機器や物件取得費など高額な出費は、当期に一気に経費算入するのではなく、減価償却費として通年で分割して費用計上します。会計の見た目上、支出は小さく見えますが、実際には大量にキャッシュアウトしており、その分を差し引きます。

歯科医師経営 キャッシュフロー
(画像=あきばれ経営歯科online)

<計算項目>

  • 設備投資

<計算式>

設備投資

=ユニット購入費+物件取得費 など

負債

「負債」のキャッシュアウト100万円とは、医療機器やリフォーム費用についてローンを組んでおり資金的に余裕がある場合に、前倒しで返済する分を指します。

歯科医師経営 キャッシュフロー
(画像=あきばれ歯科経営online)

<計算項目>

  • 負債

<計算式>

負債(100)

=前倒し返済分 など

これら全てを通算した結果、当期キャッシュ増減合計は950万円のプラスとなります。

歯科医師経営 キャッシュフロー
(画像=あきばれ歯科経営 online)

歯科医院がキャッシュフロー改善で意識したいポイント

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(画像=pixta)

歯科医院のキャッシュフロー改善のポイントとして、以下の3つがあります。

  • 入出金サイクルの改善
  • 在庫・資産の見直し
  • 資金計画の作成

入出金サイクルを整える

キャッシュフローを改善するには、「入金は早く、支出は遅く」が原則です。

例えば、クレジットカードなどの決済サービスを導入しており、入金が遅い状態なら入出金サイクルを工夫する必要があるでしょう。

他にも、材料費などを仕入れるための支出を遅くできれば、入出金サイクルの改善につながります。

しかし取引先との信頼関係を損なうリスクがあるので、あくまでも可能な範囲で考えることが大切です。

在庫・資産を見直す

在庫が増えている場合は仕入れサイクルを見直し、遊休資産があるなら売却を検討します。

在庫管理は整理、整頓、清掃、清潔、躾の「5S」が基本です。場合によっては在庫管理システムの導入も検討します。

また、稼働していない事務用設備(旧型のパソコンなど)があれば、遊休資産として売却することで、キャッシュフローが改善される可能性があります。

資金計画を立てる

歯科医院を経営するうえで資金計画を立てることは大切です。開業直後の借入計画だけでなく、開業後の資金繰りや収支計画も考えなければなりません。

会計上の損益計算書や貸借対照表だけではキャッシュフローの流れが追いにくいため、キャッシュフローをベースに、長期的な資金計画を立てましょう。

まとめ

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(画像=Prostock-studio/stock.adobe.com)

歯科医院にとってキャッシュフローの意識は大切です。会計上は利益が出ていても、手元に残るキャッシュが少ない場合は何らかの改善が必要でしょう。

キャッシュフローの計算方法として、キャッシュフロー項目を洗い出した後、営業・投資・財務項目ごとにそれぞれ計算して、最後に期間内の合計を計算します。

キャッシュフローの改善ポイントは「入出金サイクル」と「在庫・遊休資産の見直し」です。その後に長期的な資金計画を立てるとよいでしょう。

参考元:
引用元:日新税理士事務所 歯科医院の経営改善 在庫管理の見直し

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あきばれ歯科経営 online編集部

歯科衛生士でもある「あきばれホームページ」歯科事業部長の長谷川愛が編集長を務める歯科医院経営情報サイト「あきばれ歯科経営 online」編集部。臨床経験もある歯科医師含めたメンバーで編集部を構成。

2021年5月14日「あきばれ歯科経営 online」正式リリース。全国1,100以上提供している「あきばれホームページ歯科パック」による歯科医院サイト制作・集客のノウハウを元に、歯科医院経営を中心とした歯科医院に関する様々な情報を経営に役立つ観点からお届けする。