歯科医院の「守り」の広告戦略 ―期待値調整と口コミ対策―

のぶ歯科クリニックを経営している丸橋伸行です。

開業当初、当院に来院される患者さまは1日10人程でした。

しかし、その4年後には年商1億円になり、現在は年間新患数2,000人、年商2億円の歯科医院へと成長することができました。

スタートでつまずいた当院が、短期間で一定規模の売上を上げられたのは広告を活用したからです。

連載第1弾では、「歯科医院における広告の考え方や活用法」を私の経験を元にご紹介しましたが、第2弾は「効果的な広告の作り方」についてお伝えしていきます。

これまでの連載を通し、勝率の高い「攻めの広告」についてお伝えしてきました。

今回は、広告を「守り」として使う方法を解説します。

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広告を「守り」に使う時のポイント

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(画像=あきばれ歯科経営 online編集部)

患者さまの期待値をコントロールする

広告を打つ際に、もし集患だけを考えるなら、単純に「患者さまの期待値」を高めれば良いでしょう。

しかし、診療や接遇のハードルを上げておいて、患者さまの来院時に期待値以上のサービスを提供できない場合は「期待外れ感」や「失望」を患者さまに抱かせてしまいます。

当院のホームページでは、「他にはない医院」「すばらしい医院」などの文言は一切使っていません。

むしろ「名医ではない」と断言しています。

自院を卑下しているのではなく、患者さまの期待値を上げないように広告でコントロールしながら集患しているのです。

ガイドラインを守る

平成30年における医療広告ガイドライン改正の特徴は2つあります。

1.インプラントや美容外科など特定の診療科だけでなく、全診療科に注意を促した
2.集患テクニックがことごとく規制の対象となった

この2つにより、一般事業者が使う集患テクニックがほとんど通用しなくなりました。

先述した「患者さまの期待値」にも通じますが、ガイドラインに抵触しないように比較誇大広告表現を避けることは先生の安心材料にもなります。

「広告に書いてしまったから後には引けない」と自らを追い込まずに済むからです。

広告制作時には保健所へお伺いをたてる

連載第1弾の3回目でもお伝えしたように、広告を保健所と一緒に作ることで「ガイドラインに抵触していない」というお墨付きがもらえます。

ガイドラインがよく分からなければ「分からない」と保健所に相談することをお勧めします。

相談する際に注意すべき点は「保健所の地域や担当者ごとに解釈が異なる」ということです。

例えば、当院が現在使用している看板でも、他の地域の保健所に持ち込んだ場合は許可が下りないという可能性もあります。

また、保健所の担当者との間には地道な交渉が必要です。

実際、当院の看板は他の歯科医院と比べ、表現の独自性が強かったため、保健所の担当者が惑い幾度となく修正を重ねました。

低評価口コミへの対応策

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(画像=pixta)

ホームページを公開すれば、避けて通れないのが「低評価口コミ」です。

避けて通れないとは言え、低評価ばかりが並べば、さすがに集患に関わりますので、できるだけ早く、提供する医療サービスを改善するなどの対応をしなければなりません。

院内の質を保つ

私は、「口コミの1つひとつに振り回される必要はない」と考えています。口コミとは「現実と期待値のギャップ」です。

そもそも、患者さまの期待値を完全に制御することはできません。

低評価の項目を1つずつ改善していくよりも、院内の質を一定に保つ方が効率も良く、効果的ではないでしょうか。

そこで前回お伝えしたように、当院では一定の質を保つためにオペレーションを均一化しました。

  • 「院内の質」でKPIを定める
  • オペレーションを決める

同じオペレーションでも「できる人・できない人」に分かれてしまいます。この「できる・できない」の差をいかに均一化するかが問題です。

そこで、

  • オペレーションができない人を「教えたらできるタイプ」と「教えてもできないタイプ」に分類
  • 教えてもできない場合はできることのみ担当してもらう
  • 教えてもできないオペレーションは、教えたらできるタイプの人に交代する

このようにすることでオペレーションは均一化され、歯科医院全体の質も保たれるようになりました。

口コミ対策のポイント

1.低評価は成仏できなかった無念
人は嫌な思いをしたとき、誰かに話さずにはいられません。

嫌な思いが患者さまから消えなかった場合、それは口コミに現れます。

低評価は、いわば成仏できなかった無念です。

歯科医院の適切な対応は、患者さまの嫌な思いを消して、無念を成仏させてあげることです。

2.事実確認をしない
低評価口コミへの対応において「ネット上での事実確認」はNG行為です。

低評価口コミには、言いがかりのようなものも含まれるため、つい事実確認をしたくなります。

しかし、歯科医院がすべきことはあくまでも「事後報告」です。

「あなたの貴重なご意見をいただいたので、私たちはこのような対応をしました」という姿勢を見せると、投稿者は「自分の意見が役に立った」と感じます。

低評価口コミが成仏する瞬間です。

3.未来に目を向ける
低評価口コミへの対応を丁寧に行っていれば、見込み患者さまにとって誠実な歯科医院に見えます。

逆に、低評価口コミを放置していれば不誠実な歯科医院に見えます。

低評価口コミへの対応は歯科医院の将来に目を向けた、広告業務の一環として取り組むことをお勧めします。

4.自作自演が許されるケース
巷には自院に高評価を付けてくれる業者もいます。

言わば「自作自演」であるためモラルが問われますが、許されるケースもあるのではないでしょうか。

私は「低評価がたくさん付いたとき」であれば、歯科医院運営のために自作自演もやむを得ないと思います。

低評価がたくさん付いた時だけ評価の星を買い、まずはホームページの見た目を整える。

そして集患できている間に、急いで院内の質を高め、患者さまの「期待値とのギャップ」の辻褄を合わせれば良いと考えています。

5.昔はよかったという声
口コミに限らず、「昔は良かった」とおっしゃる患者さまは一定数います。

しかし、先生の歯科医師人生は先生ご自身のものです。

自分で責任を持っているのだから、過去を懐かしむ人の声に惑わされず「先生の人生」を歩むべきではないでしょうか。

ここまで、広告制作の考え方について解説してきました。

次回は各論として具体的に看板やホームページの作り方について解説します。

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丸橋 伸行 著
(デンタルダイヤモンド社)

歯科初!患者さんが集まる「広告」のコツ、教えます。

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丸橋 伸行

のぶ歯科クリニック 院長

1999年 広島大学卒、2006年 神戸市でのぶ歯科クリニックを開業。

立地と紹介に頼らない歯科医院作りをテーマに、広告を中心とした集客で歯科医院を運営。看板とホームページを活用してショボい立地で年間新規患者数2,000人となる。

その経験をもとに、チェアーが埋まらない院長に対してシークレットコンサルを行う。

一方でマネジメントで悩む院長に対しては『マネジメント熱心な院長が医院を破壊する』『スタッフとの距離を詰めるな』『マネジメント問題の8割はマーケティングに問題がある』と独自の切り口でアドバイスを行っている。