サービス残業はNG 残業代削減の改善方法

貴医院では、スタッフに対してきちんと残業代を支払っていますか?当たり前のことですが、一般の企業と同じように、歯科医院もスタッフに対して残業代を支払う必要があります。「サービス残業は違法である」ことは、企業も歯科医院も変わりません。

そこで今回は、サービス残業に関する注意点や残業を削減するコツを解説します。

歯科医院でもサービス残業は違法

残業代を支払わなければならないケース

労働時間は労働基準法第32条によって「所定労働時間は1日8時間、1週間合計40時間まで」と定められています。これを法定労働時間といいます。1日の法定労働時間である8時間を超えた分については残業代が発生します。

ここでいう労働時間とは、使用者である院長の指揮命令下でスタッフが働く時間のことを指します。制服への着替えやミーティング、院内勉強会などもこれに含まれます。

時間外労働に対しては、通常の賃金×1.25の割増賃金を支払わなければなりません。例えば時給が1,000円の場合、時間外労働における時給は1,250円となります。

休憩時間の取り扱いにも注意

休憩時間の取り扱いにも注意しておきましょう。具体的には、労働時間が6時間を超える場合は「45分以上の休憩」、労働時間が8時間を超える場合には「1時間以上の休憩」を与える必要があります。

歯科医院では、午前の診療が伸びて休憩時間が短くなったり、休憩時間中に電話番や患者さま対応をしなければならなかったりするケースがあります。休憩時間中に労働をさせた場合は、当然その分の残業代を支払う必要があります。ただし休憩を分割して取ることも可能なので、昼休み以外で不足分を補うこともできます。

残業代の計算は1分単位が原則

残業代の計算についてもいくつかの注意点があります。労働基準法では、残業時間は1分単位で計算するのが原則です。これは「労働者は働いた時間分の報酬が支払われるべき」という原則に基づいており、「15分単位で計算」「30分以下は切り捨て」という運用は法的には認められていません。

ただし、残業時間を1ヶ月分まとめて計算する場合に限り、30分単位で四捨五入することは認められています。「全てのスタッフの残業時間を1分単位で計算する」という事務処理は煩雑であり、あまり現実的とはいえないためです。

未払い残業代を請求されたら支払い義務がある

もし未払いの残業代があり、スタッフがその支払いを求めた場合は、支払いに応じなければいけません(時効は対象となる給料日の翌日から3年以内)。リスク管理意識の高いスタッフはタイムカードをコピーしたり、勤怠管理システムの打刻画面をスマホで撮影したりして、証拠を保持していることもあります。

もちろんそうした物的証拠をスタッフが持っていない場合でも、スタッフから歯科医院に対して情報の開示を求めることができます。他にもPCのログイン・ログアウトの記録や入退室の警備記録、時刻記載のある診断書やカルテなど立証方法は多数ありますので、ごまかそうと思わないほうが賢明です。

歯科医院でサービス残業させないための対策

予約を詰め込みすぎない

歯科医院で残業させないための対策としては、まず「予約を詰め込みすぎない」ということが挙げられます。

もちろんたくさんの患者を診察し回転率を上げれば、より利益を上げることができます。しかし本来のキャパシティー以上に予約を詰め込みすぎれば、スタッフそれぞれの業務量も増大し、診療時間内に全ての業務が終わらず残業してしまいがちです。

予約枠が適正かどうかを検討しつつ、予約が押してしまう場合はその原因を洗い出すようにしましょう。

片付けや掃除を早めに始める

患者数が多ければ多いほど使う器具の量も多くなり、その分洗い物や片付けに時間がかかってしまいます。診療が忙しいからと後回しにしていると、診療終了後に溜まった洗い物をまとめて処理することになり、必然的に残業が発生してしまうでしょう。

これを防ぐためには、

  • 診療をこなしながら洗い物をこまめにやっておく、
  • その日使わない器具は先にしまっておく
  • 使い終わったユニットから順次締めていく

など、片付けや掃除は早め早めに進めるよう意識します。翌日の診療前に仕事を回してしまうのも一つの方法です。人員やそれぞれの仕事内容を見直すなど業務効率の改善余地がないかも検討しましょう。

事務・雑務を担当するスタッフを雇う

歯科医院は意外と事務作業や雑務が多い現場です。歯科医師や歯科衛生士が診療以外の業務もこなすとなると、その分本来の業務に充てる時間が削れてしまいます。

必要に応じて歯科助手・受付やクリーンナップスタッフを雇い、洗い物や掃除、予約対応、カルテ入力、会計処理などの業務を任せましょう。そうすれば歯科医師や歯科衛生士が本来の業務に集中でき、診療がスムーズに進むことに加え、治療やサービスの質の向上にもつながります。

みなし残業代(固定残業手当)を導入する

残業を削減したいと思っても、なかなかゼロにするのは難しいでしょう。その場合はみなし残業代(固定残業手当)の導入も検討します。みなし残業代とは「基本給〇〇万円+みなし残業代〇万円(〇時間分)」という形で、残業代をあらかじめ給与に含ませておく制度です。

設定された時間内であれば残業しても割増賃金が発生しないため、賃金計算がシンプルになり、未払いのリスクも軽減されます。もちろん、みなし残業時間を超えた分は通常通り残業代を支払わなければなりません。

また、毎月の残業代が固定されるので、スタッフに「余計な残業をせず業務を効率化させよう」というインセンティブが生まれます。ただし、みなし残業代の設定には法的な制約があり、「最低賃金を下回ることはできない」という点に注意しておきましょう。

歯科医院における残業代を削減する方法

基本給ではなく諸手当を増やす

残業代の計算式は「基本給÷所定労働日数×残業時間」です。つまり、基本給が高ければ高いほど、残業代も高くなっていきます。そのため、基本給を低く抑えてその分諸手当を充実させることで残業代を削減できます。

諸手当には役職手当や家族手当、業務に関係する資格手当などさまざまなものがあります。歯科医院でよく設定されるのは「主任手当」や「衛生士手当」などです。

小規模事業場における労働時間の特例を活用する

労働法施行規則25条の2では「小規模事業場における労働時間の特例」を定めています。通常であれば法定労働時間は1日8時間、週40時間と定められていますが、常時雇用が10人未満の小規模事業場の場合は「週44時間」まで残業代なしで働かせることができます。

歯科医院は労働基準法における特例対象事業場であり、多くの場合この特例が適用されます。ただし、特例を適用する場合は「雇用契約書」や「就業規則」への記載が必須です。

また、あくまで1日の労働時間は通常通り8時間である点にも注意しましょう。よくある活用例としては、平日5日×8時間+土曜日の午前4時間といった勤務スタイルが挙げられます。

変形労働時間制にする

日によって忙しさや人員確保の度合いにばらつきが出る医院も多いでしょう。その場合は変形労働時間制の導入が効果的です。変形労働時間制のメリットは、「月単位や年単位で法定労働時間を超えなければ、1日の法定労働時間を超えても残業代は発生しない」ことです。変形労働時間制を適用するには労使協定の締結、および管轄の労基署へ届け出が必要です。

例えば1ヶ月単位の変形労働時間制を採用する場合、「平均労働時間」が1週間あたり40時間を超えていなければ、仮に1日8時間以上働いている日があったとしても残業代を支払う必要がありません。

まとめ

現在では労働環境への取り締まりが多数なされており、「サービス残業が当たり前の時代」は終わりつつあります。スタッフの職場環境に対する目も厳しくなり、残業代に関してはトラブルになりやすいのが現状です。

法令をきちんと理解した上で適切な労務管理を心掛け、スタッフに気持ちよく働いてもらえるような環境作りを目指しましょう。