売上1億円の歯科医院の割合や売上のポイント解説

本記事ではまず、医業収益が1億円を超える歯科医院(歯科診療所)の割合について解説します。

その後に1億円を超える歯科医院の特徴として、自由診療収入、人件費負担、利益率について詳しく見ていきます。

最後に、歯科医院が医業収益を伸ばすための3つのポイントについても解説しますので、ぜひ内容を押さえていただければと思います。

売上1億円の歯科医院の割合とは

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(画像=DM7/stock.adobe.com)

「歯科経営情報レポート」の歯科診療所経営実績分析によると、2019年に決算を終えた歯科診療所332件のうち、医業収益1億円を超えた歯科診療所は10.5%となっています。

なお、医業収益を3種類に区分すると、それぞれの比率は以下の通りです。

  • 5,000万円未満:51.5%
  • 5,000万円以上1億円未満:37.9%
  • 1億円以上:10.5%
厚生労働省「第22回医療経済実態調査」
(画像=厚生労働省「第22回医療経済実態調査」)

このように医業収益1億円を超えている歯科診療所は約1割で、医業収益5,000万円未満の歯科診療所が半数以上という結果でした。

また、医業収益1億円を超えている歯科診療所のうち、個人医院は2割に留まり、8割が医療法人となっています。

歯科医院の平均売上

厚生労働省「第22回医療経済実態調査」(2019年調査) によると、歯科診療所の医業収益の平均は以下の通りです(介護収益除く,2018年データ)。

厚生労働省「第22回医療経済実態調査」(2019年調査)歯科診療所の医業収益集計表抜粋
(画像=厚生労働省「第22回医療経済実態調査」(2019年調査)歯科診療所の医業収益集計表抜粋)
  • 個人立:4,469万円
  • 医療法人:9,447万円
  • 市町村立:5,088万円

医療法人の医業収益の平均は9,000万円を超えており、1億円を超える歯科診療所も多いことが想定されます。個人立の歯科診療所も平均が4,000万円超で、1億円は十分に目指せる水準だといえるでしょう。

売上が1億円を超える歯科医院の特徴

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(画像=ponta1414/stock.adobe.com)

医業収益が1億円を超える歯科診療所の特徴としては、3つが挙げられます。それぞれ見ていきましょう。

売上が1億円の歯科医院の特徴:自由診療収入が多い

前掲の「歯科経営情報レポート」によると、医業収入1億円超の歯科診療所(2019年度)は、医業収入平均1億5,452万円のうち、自由診療収入平均が4,924万円と1/3を占めています。

一方、医業収入5,000万円未満の診療所は自由診療収入の比率が約1割です。医業収入5,000万~1億円の診療所に関しても、自由診療収入の比率は2割以下となっています。

このように1億円超の歯科診療所が最も自由診療収入の比率が高いという結果でした。

売上が1億円の歯科医院の特徴:人件費負担が増加

同じく「歯科経営情報レポート」によると、医業収入1億円超の歯科診療所は、医業費用8億5,522万円のうち、人件費が4億816万円と半分に迫ります。

一方、医業収入5,000万円未満の診療所と医業収入5,000万~1億円の診療所の人件費比率は約3割です。

このように1億円超の歯科診療所が最も人件費の比率が高いのです。

売上が1億円の歯科医院の特徴:利益率は低下傾向

同じく「歯科経営情報レポート」によると、医業収入1億円超の歯科診療所の医業利益は3億6,471万円と、医業収入15億4,523万円に占める利益率は約20%です。

一方、医業収入5,000万円未満の診療所の利益率は約40%、医業収入5,000万~1億円の診療所の利益率は約35%となっています。

このように1億円超の歯科診療所が最も利益率が低いですが、その原因としては人件費負担が大きく響いていると考えられるでしょう。

売上が1億円の歯科医院を目指すには!歯科医院が売上を伸ばす3つのポイント

歯科診療所が医業収益を伸ばすポイントとして次の3つの施策があります。それぞれ見ていきましょう。

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(画像=grek881/stock.adobe.com)

自由診療にも注力する

医業収益・売り上げが1億円を超える歯科診療所は自由診療収入の比率が高く、収入を増やすには保険診療だけでなく自由診療にも取り組むことが有効です。

自由診療を無理強いすると患者満足度が低下するため、患者の必要に応じて自由診療を選択してもらうことが大切ですが、そのためには自由診療のメリットを写真や図のようなビジュアルで分かりやすく説明することがポイントになるでしょう。

患者には丁寧に説明する

歯科医院に訪れた患者は不安や恐怖を感じているものです。

大人の患者でも歯医者に抵抗を持つ方はいますし、治療や器具に関する知識もないでしょう。

患者の不安や恐怖を少しでも和らげるには丁寧な説明が大切です。歯科医師にとっては当たり前のことでも、患者は疑問・不安を感じるもの。

「現在、患部はどのような状態なのか」「どのような治療を行うのか」「費用や通院回数の目安」など治療内容を具体的に説明しましょう。

患者の立場に寄り添った説明で好印象を与えればリピート効果が期待できます。リピート率が上がれば、必然的に歯科医院の売上もアップします。

子どもの患者に対しても、しっかり説明しましょう。

余計な恐怖心を取り除くために有効なのは、子どもの患者の接遇における基本テクニックであるTSD(Tell Show Do)法です。

また、「バキューム」は「お口のそうじ機」、「エアータービン」は「歯のシャワー」などのように、治療内容をより身近な言葉で言い換えるテクニックも効果的です。

このように丁寧に説明することで不安を取り除き、安心して治療を受けてもらえる可能性が高くなります。

必要な支出は惜しまない

医業収益・売上が1億円を超える歯科診療所は人件費の負担割合が大きい傾向があります。

まとまった医業収益を立てるには多くの診療を高いクオリティでこなす必要があり、スタッフの確保・教育は必須となるでしょう。

スタッフへの技術研修によって医療技術が向上し、ホスピタリティ研修によって接遇レベルがアップすれば、患者がリピート化することで医業収益の増加が見込めます。

このように必要な支出は惜しまないことが大切です。

集客施策に取り組む

集客施策として、お子さま向けの優しい接し方や、便利な予約システムの導入などがあります。歯科診療所を探す時には、まずインターネットで調べる患者も多く、SEOやWeb広告など、マーケティングの視点も集客には有効と思われます。

SEOとは「検索エンジン最適化」を指し、患者がGoogleやYahoo!といった検索エンジンで検索した時に、自院が検索結果の上位に表示されることを目指す施策です。

Google検索結果画面の例(「調布市 歯科」)
(画像=Google検索結果画面の例「調布市 歯科」)

歯医者を探している患者が「○○市 歯科」などの地域ワードでネット検索した時に、SEO施策やWeb広告によって自院のホームページが1ページ目に表示されていれば、クリックしてもらえる可能性があります。

そこから新患の予約も期待できるため、医業収益の増加が期待できます。

1日の売上目標を立てる

売上目標を細かく設定することでモチベーションを保ちやすくなります。

自院スタッフと共有すれば、スタッフ全員の士気を高める効果も期待できます。

また、売上目標を設定すれば自然に目標を達成しようという意識が高まるものです。

仮に達成できない日があってもその理由や改善策を検討・実行するというPDCAサイクルを回すことで、売上は伸びていくはずです。

ただし1日の売上目標を必ず達成できるとは限りません。悪天候や急な予定変更でキャンセルが相次ぐ日もあるでしょう。

大切なのは、そのような時も売上につなげようとする姿勢です。

来院数が少なく1人ひとりの患者にかける時間が増えれば、「丁寧に説明をしてもらえた」「時間をかけて治療を行ってもらえた」と満足度が高くなり、リピート率の向上や口コミ効果につながるかもしれません。

その結果、将来的に1日の売上目標を連日のように難なく達成できるようになるでしょう。

歯科医院の利益率の計算方法

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(画像=milatas/stock.adobe.com)

歯科医院の経営では医業収益を伸ばすことも重要ですが、それに伴ってコスト過剰になってしまうと、手元に利益が残らず、財務を圧迫するリスクがあります。

医業収益を伸ばす時に忘れてはならないのが利益の確保、そして利益率の計算です。そのためにまずは医業収益を合算します。

次に固定費・変動費を洗い出し、最後に利益の額を総収入で割ることで利益率が分かります。

具体的に見ていきましょう。

医業収益を合算する

まずは医業収益の合算です。以下の4つを足し合わせて総収入を計算します。

  • 保険診療収益
  • その他の診療収益(自由診療収益が含まれる)
  • 労災等診療収益
  • その他の医業収益

具体的には、次の式で求めることができます。

総収入=保険診療収益+その他の診療収益+労災等診療収益+その他の医業収益

総収入から固定費と変動費を差し引いた金額が利益となりますので、ファーストステップとして医業収益の合算を行ってください。

  • 固定費を計算する 次は固定費の計算です。費用には変動費と固定費がありますが、人件費や設備のように、医業収益や患者数などに左右されず、一定の金額が発生するのが固定費です。

具体的には以下のような費用が固定費となります。

  • スタッフの人件費
  • 設備・機器のリース料
  • 医療機器のリース料
  • テナント料
  • ローンの利払費

それぞれの項目を洗い出した後、合算して固定費総額を求めます。計算式は次の通りです。

固定費=スタッフの人件費+設備・機器のリース料+医療機器のリース料+テナント料+ローンの利払費

変動費を洗い出す

固定費の次は変動費を求めます。変動費とは、医薬品費や歯科材料費のように、医業収益や患者数に伴って変化する費用です。

具体的には以下のような費用が変動費となります。

  • 医薬品費
  • 歯科材料費
  • 備品・雑費
  • 委託費

歯科医院では、材料代や技工代も変動費に含まれるので、忘れずに洗い出しましょう。その後に足し合わせて変動費の総額を求めます。

変動費=医薬品費+歯科材料費+備品・雑費+委託費

固定費と変動費を算出することで、次に解説する利益額と利益率が分かります。

利益額を総収入で割る

総収入から、固定費と変動費を差し引いた金額が大まかな利益額です。計算式はこうなります。

利益額=総収入-固定費-変動費

この利益額を総収入で割ることで利益率が分かります。計算式は次の通りです。

利益率=利益額/総収入

一般的に「歯科医院は利益率が高い」と言われますが、もし利益率が低くて自院の財務状態が芳しくなければ、費用の見直しが必要になるかもしれません。

その場合もすでに固定費と変動費を洗い出しているので、削りやすい項目が分かるのではないでしょうか。

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まとめ

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(画像=直聖 安田/stock.adobe.com)

医業収益1億円を超える歯科診療所は約1割で、そのうち約8割が医療法人です。特徴としては自由診療収入が多いものの、人件費負担の増加によって利益率は低下傾向といえます。

歯科診療所が医業収益を伸ばすには、ビジュアル的な説明などを用いて自由診療に注力し、スタッフ研修のような必要な支出を惜しまず、インターネット集客にも積極的に取り組むことが大切といえるでしょう。

引用元:日本ビズアップ株式会社 2019年決算データからみる歯科診療所経営実績分析 参照2019年経営実績とその傾向

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あきばれ歯科経営 online編集部

歯科衛生士でもある「あきばれホームページ」歯科事業部長の長谷川愛が編集長を務める歯科医院経営情報サイト「あきばれ歯科経営 online」編集部。臨床経験もある歯科医師含めたメンバーで編集部を構成。

2021年5月14日「あきばれ歯科経営 online」正式リリース。全国1,100以上提供している「あきばれホームページ歯科パック」による歯科医院サイト制作・集客のノウハウを元に、歯科医院経営を中心とした歯科医院に関する様々な情報を経営に役立つ観点からお届けする。