歯科で利益アップする戦略と具体的な施策を解説

本記事では、歯科医院(歯科診療所)が利益をアップさせるための戦略と具体的な施策について解説します。最初に「利益アップの考え方」について説明した後、「収益を増やす3つの施策」と「コストを抑える施策」、「事例形式による歯科医院の利益額のシミュレーション」、最後に「継続的な利益体質になる方法」についても触れます。1つずつ見ていきましょう。

歯科医院が利益をアップさせる考え方

歯科医院が利益をアップさせる考え方として、「収益と費用の点検」、「業界水準との比較」、「目標と戦略の明確化」があります。

収益と費用を点検する

医業収益に関する項目には、以下が挙げられます。

  • 保険診療収益
  • 労災等診療収益
  • その他の診療収益
  • その他の医業収益

一方、医業費用としてかかるのはこのようなものです。

  • スタッフの給与費
  • 医薬品費
  • 歯科材料費
  • 委託費
  • 減価償却費
  • 設備・医療機器に関する費用

こういった項目を細かく洗い出したうえで、多すぎるのか、適正なのか、もしくは少ないのか、といった検討をしっかり行うことが大切です。

業界水準と比較する

一般的に歯科医院の変動費は、収益比で10〜20%が適正とされています。厚生労働省「医療経済実態調査」によると、2018年実績では税引前利益率の業界平均は個人歯科医院が28.4%、歯科医療法人が9.4%でした。

このような業界水準の数値と比べて、自分の医院の利益率が高いか低いかを比較しましょう。

なお、主な変動費の項目の1つに材料費がありますが、粗利は「売上高-変動費」で表せる数値なので、あまりにも粗利率が低い場合は材料費が高すぎる可能性があります。

目標と戦略を明確化する

利益目標を立てるには、今までの医業収益と費用をチェックした後、来月達成したい利益の水準を決めて、予定される費用を元に予算を出すことが大切です。「達成したい利益+コスト予算」が売上高目標となります。

重要なのは、利益額のゴールから逆算して目標を立てることです。医業収益のアップはイメージしやすいですが、利益から考えることで、利益目標を達成するための具体的な道筋をつけやすくなります。

歯科医院が収益を増やす3つの施策

歯科医院が医業収益を増やす戦略として、「集客体制の強化」、「リピートを生む仕掛け」、「付加価値の向上」があります。

集客体制を強化する

集客体制を強化するためには、チラシや地域の広告なの紙媒体の施策のみならず、新規顧客の獲得なども視野に公式ホームページのようなWeb対策も含めた販促・広告を積極的に実施することが大切です。

「最も影響力のある媒体は公式ホームページ」というマーケティング支援会社の調査結果もあり、最近では歯科医院を調べる際にインターネットで検索する患者も多く存在します。患者がGoogleやYahoo!といった検索エンジンで歯科情報を検索した時に自院を検索結果の上位に表示させる「SEO」(検索エンジン最適化)や同じように地図上で自院を優先的に表示させる「MEO」(地図エンジン最適化)に加え、公式ホームページを充実させるなどの対策はしっかり実施しましょう。

なお、競合との差別化を踏まえ、自院の強み(コンセプト)を一言で示すことができれば、販促・広告をスムーズに進めやすくなります。

リピートを生む仕掛けを作る

リピートを生むには、初回の患者が再来院したくなる施策が重要です。以下のような基本的なポイントは当たり前に実施しましょう。

  • 技術を高める
  • 痛みを減らす
  • 治療期間を説明する
  • 分かりやすく説明する
  • 安心できる雰囲気を作る
  • 受付スタッフの対応と身だしなみに注意する

それたに加えて、予防歯科、自由診療の提案、予約システムの導入といった付加価値の提供が競合との差別化につながり、患者にとってリピートしやすい環境が整っていきます。

付加価値を高める

自院の付加価値を高めるために、保険診療だけでなく、自由診療(自費診療)にも取り組みましょう。自由診療にはクラウン、ホワイトニング、インレーなどがありますが、最近注目なのは透明の矯正・マウスピース矯正です。

なお、「歯科診療所経営実績分析」によると、医業収益1億円を超える歯科診療所は自由診療収入の比率が高い傾向にあり、医業収益全体の3割超との結果になっています。

このように自由診療を強化すれば単価が上がり、利益アップに役立つでしょう。

歯科医院がコストを抑える施策

歯科医院がコスト(費用)を抑える施策には、「材料費の見直し」、「在庫管理の実施」、「システムの導入」があります。どの施策もコストの削減が見込めて利益アップにつながります。

材料費を見直す

コストを抑えるには、材料費、技工費、リコール数の見直しが大切です。つまり、安い価格で材料をまとめて購入し、技工の再製・印象を直す回数が少なく、患者全体におけるリコール数が多ければ利益率は向上します。

特に材料費は変動費の多くを占めるので、品質に影響が出ない範囲でより安い材料を選ぶなど、仕入れ先の見直しが重要といえるでしょう。ただし品質が低下して問題が発生しないように、慎重に選定する必要があります。

在庫管理を行う

在庫管理は以下の「5S」を基本に徹底しましょう。

整理:不要物を処分して無駄を省く
整頓:整理整頓された状態を保つ
清掃:清掃と器具機材の点検
清潔:消毒滅菌レベルの維持向上
躾:自院の方針の院内共有

「5S」の徹底によって、どこにどのような無駄が発生しているか分かれば、損失を減らす対策も立てやすくなります。

システムを導入する

電子カルテや予約管理システムといったシステムを導入することで事務作業の負担軽減・人件費削減につながります。

電子カルテの中には、リアルタイムで機能するチェックシステムを搭載しており正確なレセプト作成に役立つものもあり、こういった種類を選べば作業の効率化につながるでしょう。

また予約管理システムのなかには月額契約プランに対応しているものがあり、コスト削減に役立ちます。

【事例で解説】歯科医院の利益額の計算をシミュレーション

ここまで利益率の考え方について解説してきましたが、実際に事業を運営する際はどのように計算すればよいのでしょうか。ここでは、事例形式で、歯科医院の利益額の実践的な計算方法を解説していきます。

1.現状の損益構造を分析する

まずは現状の損益項目を洗い出し、構造化しましょう。ここで構造化とは、損益を構成する要素を分解し、損益全体がどのように組み立てられているのかを把握することを指します。

構造化する際は、前掲の表のように、損益に関わる項目について1つひとつブロックのようなまとまりを作り、パズルのように組み立てます。こうすることで、視覚的に把握しやすくなります。

歯科経営 利益アップ
(画像=株式会社ユメオカ)

例えば上記の表では、「売上高」を「変動費」と「粗利」に分解し、さらに粗利を「固定費」と「利益」に分解することで、「売上」から「利益」の計算に至る道筋が分かりやすく示されています。

詳しく計算すると、売上高1,000万円に対して変動費が200万円で、差し引いた粗利は800万円です。さらにそこから人件費400万円やその他費用300万円を合わせた固定費700万円がかかり、残る利益は「粗利800万円-固定費700万円=利益100万円」と計算できます。

この方法は、単に「売上」「利益」と捉えるのではなく、パズルのように視覚的に損益の項目が大きさによって表現されていることで、「何が利益を圧迫しているのか」「支出をコントロールできているのはどの項目か」などが一目瞭然となるのです。

2.将来の利益額を試算する

ここからは、上記の計算方法を使って、将来の利益額を計算してみます。

例えば、1,000万円かけてユニット1台を増設するかどうか検討しているケースを考えましょう。

<固定費> まず固定費について、5年間(60ヶ月)かけて分割購入する場合、ユニットの支払費用は「1,000万÷60ヶ月=約17万円/月」となります。また、ユニット増設に伴ってスタッフも増えることで、人件費60万円/月が加算され、旅費・制服・水道光熱費などのその他支出も30万円/月増えると想定します。

つまり、増加する固定費は「人件費60万円+ユニット代17万円+その他30万円=107万円/月」となり、毎月の固定費は「従来分700万円+追加分107万円=807万円/月」に増えるという想定です。

<変動費> ユニット増設に伴って患者数が増え、医薬品や歯科材料などの変動費も増加します。ここでは、従来200万円だったのが、227万円に増えると仮定しましょう。

<総コスト> ここまでの項目を合計した総コストは以下の通りになります。

総コスト=変動費227万円+固定費807万円=1,034万円

従来は「変動費200万円+固定費700万円=900万円」だったのに対して134万円増加していると計算できました。

<売上・利益> 最後に、売上と利益額のシミュレーションです。

従来の利益額は100万円でしたが、ユニット増設に伴って総コストが134万円増えるので、単純計算で売上が横ばいの1,000万円であれば34万円の赤字となります。

歯科経営 利益アップ
(画像=株式会社ユメオカ)

そこで、ユニット増設に伴って回転率や患者数が増える点も考慮してみましょう。仮に売上が138万円増えれば、「売上1,138万円-総コスト1,034万円=104万円」となり、ユニット購入費の元が取れつつ、かつ利益額もアップするという結論になります。

経営判断では各項目の資産が重要

上で計算してきたように、歯科医院の「損益構造」を理解していれば、主に以下のような経営判断をする際に適切な判断がしやすくなるのでおすすめです。

1.投資:ユニット増設などの投資で収支が成り立つか 2.売上:売上の変動が利益額にどのように影響するか 3.利益:目標の利益額を実現するには売上・コストをどうすればよいか

1つ目の投資については、上記でシミュレーションしたように、ユニット増設や広いテナントへの移転といった設備系投資の場合、設備に関わる固定費や変動費が増えますが、同時に売上も増えます。そこでユニット数や回転率を計算すれば売上高などの項目も割り出すことができ、最終的に手元に残る利益額も試算できます。

2つ目の売上については、売上が変動することで、それに伴う固定費や変動費の変化も考慮しながら、利益額に与える影響を割り出すことができます。

3つ目の利益については、目標の利益額を実現するためには、売上やコストといった項目をどのようにコントロールすべきなのかを逆算する方法です。

歯科医院が継続的な利益を生む体質になる方法

利益アップにはさまざまな施策がありますが、大切なのは取捨選択と徹底化です。

取捨選択には、先述した材料費の見直しなどがあります。現在の取引先と価格交渉を行い、仕入れ価格が下がらないようなら、別の業者との交渉を検討する必要があるでしょう。

徹底化には、医院のトップである院長が方針を決め率先して実行し、スタッフへの周知を継続することが大切です。

こうした行動を重ねることで、継続的な利益体質が構築されていくでしょう。

まとめ

歯科医院が利益をアップするには、収益と費用を細かく点検し、業界水準と比較した後、目標と戦略を立てることが重要です。

収益を増やす施策としては、販促・広告の強化とリピート戦略、自由診療のような付加価値の高い診療の提示がポイントになります。

また、コストを抑えるには、材料費の見直しと在庫管理、システムの導入も検討するとよいでしょう。

《情報収集で参考したサイト》

引用元:日本ビズアップ株式会社 2019年決算データからみる歯科診療所経営実績分析 参照2019年経営実績とその傾向

引用元:厚生労働省 医療経済実態調査(医療機関等調査) / 第22回医療経済実態調査(医療機関等調査) / 報告 歯科診療所(集計2)

【おすすめセミナー】
・【無料】10年以上応募ゼロから3ヶ月でDH2名採用! 歯科衛生士・歯科助手採用セミナー