評価の仕組みが離職を防ぐ 歯科助手の評価項目と制度

診療アシスタントやレセプト作成、患者さまの受付対応など幅広い業務に携わる歯科助手は、歯科医院にとって欠かせない存在といえます。しかし、歯科業界における慢性的な人手不足の中、歯科助手の人材確保も難しくなってきています。

優秀なスタッフに長く活躍してもらいたいのであれば、人事評価制度をきちんと整備した上で、それぞれ公平に評価することが大切です。

そこで今回は、歯科助手の評価項目のポイントや制度構築のコツを詳しく解説します。

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歯科助手の評価制度の整備に力を入れるべき理由

人事評価はスタッフのモチベーションに大きく影響する

一般的に歯科助手は女性が多く、ワーク・ライフ・バランスを重視する傾向が強くなっています。売上や患者さま満足度を向上させるために積極的な施策を打った結果、忙しくなってスタッフの負担が増えると、反発を招いてしまう可能性もあるのです。そのため、適切な人事評価によって、自発的に自院に貢献してくれるよう動機付けを行う必要があります。

「自分の仕事ぶりがきちんと評価されて給与にも反映される」ということが伝われば、スタッフのモチベーションも高まるでしょう。

歯科助手の質は歯科医院の売上や患者さま満足度に直結する

歯科助手は基本的に無資格で従事できますが、単なる雑用やお手伝いというわけではありません。診療アシスタントや受付での接遇、治療前のカウンセリングといった業務はいずれも歯科医院経営において不可欠です。

歯科助手の質が高ければ患者さま満足度はもちろん、歯科医院の売上・自費率の向上にもつながるため、きちんと仕事ぶりを評価し、スタッフのモチベーションアップやさらなるスキルアップを促すことは重要です。

歯科助手の評価ポイント

歯科助手の仕事ぶりを評価するときは、以下のポイントを意識しましょう。

コミュニケーションスキル

受付を兼務することも多い歯科助手は、歯科医院の“顔”とも呼べる存在です。良くも悪くも患者さまの印象に残りやすいので、高いコミュニケーションスキルが求められます。

コミュニケーションスキルを評価するときは、患者さまに寄り添った対応ができているか、適切な治療プランを提案できているかといったポイントを重視しましょう。さらに、歯科医師や歯科衛生士など、他のスタッフとうまく連携を取ってスムーズに診療を進められているかも要チェックです。

診療アシスタント業務

診療アシスタント業務は誰でもできると軽視されがちですが、患者さまから見た「歯科治療の質」に直結するポイントです。例えば、印象採得における印象材の練和や石膏流しなどは治療精度や患者さま満足度に大きく影響してくるので、習熟度をきちんと見極めて、必要があれば改善のためのトレーニングを行う必要があります。

また、患者さまに対する治療の説明では専門的な知識・技術が求められるケースもあるため、新たなことを学ぼうとする意欲も評価ポイントとして重要です。

レセプト作成

保険者への医療費請求に欠かせないレセプト作成は、正確性とスピードが求められる業務です。歯科医師・歯科衛生士からの伝達漏れや入力ミスがないように点検できているか、申請作業をスムーズにこなせているかといったポイントをチェックしましょう。

最近では電子化やレセコンの普及によって業務は単純化・効率化されていますが、より精度を高めるためには専門知識が求められるので、「歯科 医療事務管理士(R)」など関連資格取得に向けた意欲も評価すべきポイントです。

歯科助手の人事評価制度構築のコツ

定量化できる客観的な評価項目を設定する

個人の感覚に基づいて歯科助手を評価していると、どうしても不公平感が出てしまいます。女性は「贔屓」に対して非常に敏感です。評価内容によってはスタッフが不満を感じてしまう可能性もあるため、お互いに納得できるような評価項目を設定することが大切です。

  • 患者さまに対する接遇のレベル
  • 自費治療決定への貢献度
  • 診療アシスタント業務の習熟度

このように細分化して項目ごとに達成度を評価すれば結果を定量化・可視化でき、客観的な評価を下しやすくなります。

人事評価を給与にきちんと反映させる

歯科助手に長く前向きに働いてもらうためには、仕事ぶりを評価するだけではなく、その評価を給与にしっかり反映させる必要があります。評価が上がったのに給与は変わらなかったり行き当たりばったりだとかえってスタッフのモチベーションが低下してしまいかねません。

「ここまで達成できたら1段階昇給して〇〇円アップ」といったように具体的な指標を設けると、スタッフとしても目標を立てやすく、より前向きに日々の業務やスキルアップに取り組めるでしょう。

他のスタッフからの評価も取り入れる

院長が各スタッフの仕事ぶりを全て把握することは、現実的に考えると困難です。人事評価における精度と公平性を担保するという意味でも、各職種のチーフや他のスタッフからの評価を取り入れることは有効といえます。各スタッフに直接ヒアリングしても構いませんが、アンケート形式で「360度評価」を実施するという方法もおすすめです。

多面的に取得した評価をまとめて反映させれば、より客観的かつ納得しやすい人事評価が実現するでしょう。

研修・教育制度との整合性も重視する

もともと仕事への意欲が低い、あるいは能力があまり高くないスタッフの場合、人事評価制度によって質の高さを求められると、逆にモチベーションを維持するのが難しくなるかもしれません。そのため、スタッフが歯科医院が求める水準に到達できるよう、研修・教育制度をきちんと整えることも大切です。

歯科診療はチームプレイです。歯科助手が成長して業務の質が高まれば、診療もスムーズに進んで院長や他のスタッフが助かるだけでなく、患者さま満足度も向上します。

歯科助手の評価制度構築の具体的な流れ

評価制度の方向性を決める

評価制度の方向を決めるピラミッド図
(画像=あきばれ歯科経営 online編集部)

評価制度は以下のような流れで構築します。

  • 医院としての理念・方針の再確認
  • 中長期的な経営計画の策定(半期・年次・5か年など)
  • 現状の課題の洗い出し
  • 評価基準や評価項目の設定
  • 評価と給与の連動の仕組み(等級制度)

まず、スタッフ個人の評価基準や目標設定のベースとなる医院自院の理念を再確認した上で、歯科医院全体としての目標(中長期的な経営計画)を策定します。

次に、歯科医院としてビジョンの体現と目標達成に向けて現状の課題を洗い出した上で、その課題の解決に必要な項目を評価基準に反映します。スタッフ個人の評価基準=達成すべき目標は、常に歯科医院全体の利益と連動したものでなければならないのです。

評価基準を設定したら、それがスタッフ個人の利益(最も重要なのは給与・待遇)とどのように結びつくか設計します。

最初から完璧なものを作ろうとする必要はありません。まずはざっくりとしたアウトラインを描きましょう。

内容をスタッフに説明して認識を共有する

たたき台ができたら院内説明会を開くなど、評価制度の内容をスタッフに共有する機会を設けて、必要があれば意見を吸い上げて内容を改善していきましょう。

院長から見れば不十分であっても、スタッフは日々の仕事を精いっぱい頑張ってくれています。十分な説明もなく、いきなり評価制度を導入すると、「現状の働きぶりが至らないので、もっと頑張ってください」というメッセージだけが伝わり、スタッフの反発を招く恐れもあります。

元来、医療は営利活動ではなく、歯科医院のスタッフも「利益を上げること」は意識しづらい傾向にあります。

例えば以下のように、自院としてのビジョンを伝えることから始めて、「なぜ評価制度を導入するのか?」という目的とメリットをきちんと説明してあげることが大切です。

地域医療に貢献するために、もっと予防歯科を推進したい。
→そのために、カウンセリングや接遇スキルの向上を目指したい。
→みんなが頑張ってくれてリコール率が上がれば利益もアップし、給与として還元できる。
→患者さま・スタッフ・歯科医院の三方よしが実現できる

等級制度と連動した評価基準シートを作成する

患者応対、診療補助、会計・レセプト、マネジメントなど職務領域ごとに求められる業務レベルを明文化した評価基準シートを作成します。

  • 1等級:ここからスタート
  • 2等級:1,000円昇給
  • 3等級(チーフ):役職手当5,000円

上記にように給与・待遇と連動した等級を設定し、等級ごとに評価項目を検討します。

<例> 2等級 3等級(チーフ)
患者応対 患者さまの問い合わせに対して適切な対応ができる。 院内の状況を把握しながらスムーズな患者対応や予約管理ができる。
カウンセリング 保険と自費の違いやメニューの案内ができる。 患者さまの状況に応じた治療の提案ができる。
診療補助 おおむね全ての器具の使い方や洗浄方法を理解している。 器具の管理や発注、院長のアシスタントができる。
会計・レセプト 一人で基本的な会計業務やカルテの整理、レセコンの入力ができる。 決算業務やレセプトの点検、申請業務ができる。
マネジメント なし スタッフへの適切な指示出しや教育指導ができる。

スタッフ一人ひとりと面談して目標設定する

ただ評価基準やインセンティブを与えるだけでは、スタッフは思うように動いてくれません。

各スタッフに現状の課題を解決してもらった上で、より良い仕事をしてもらうために、院長や職種のチーフが面談しながら個別に目標設定するプロセスが重要です。

効果的な目標設定のポイント
目標はスタッフが自発的に決めて行動するのが不可欠ですが、いざ目標を設定してもらうとすると、「患者さまの満足度を上げるために質の高いコミュケーションを意識する」といった曖昧な答えが返ってくることがよくあります。

そこで、以下の「SMARTの法則」に沿って目標設定してもらいましょう。

<目標(案)> 悪い例 良い例
Specific(具体的) 接遇スキルを高める。 接遇スキルを高めるために、3社のスキルアップセミナーに参加する。
Measurable(計測可能) 患者さまにまた来てもらえるように頑張る。 リコール率を20%アップする。
Achievable(達成可能な) 入社したての新人が来月までに2等級アップしてチーフを目指す。 まずは3か月後までに1等級アップを目指し、チーフ昇格に向けてマネジメントを学ぶ。
Relevant(関連性) 野菜ソムリエの資格を取得する日本歯科医師会の歯科助手資格認定制度に合格する。
Time-bound(期限が明確) 業務マニュアルを作成しようと思う。 6月までに受付業務のマニュアル、その後8月までに診療補助業務のマニュアルを作成する。

スタッフごとに適切な目標を設定し、達成に向けた具体的な行動計画について合意を得ることが重要です。

定期的に振り返り・フィードバックを行う

評価制度を効果的に運用・機能させるには、院長がスタッフときちんとコミュケーションを取ることが不可欠です。

課題認識・目標設定→途中の進捗確認→振り返り・フィードバック・次の目標設定の3段階で面談を行い、目標達成のサイクルを回していきましょう。

定期的な面談の機会を作ることは、スタッフのモチベーションを管理し、何か問題があれば迅速に対応できるという意味でも有用です。

まとめ

歯科業界は売り手市場が続いているので、生き生きと働ける環境を整えてあげなければ、歯科助手の離職リスクは高まってしまいます。

また、これから歯科助手として働こうと求職している人は、自分に合った働きやすい職場かどうかチェックしています。人事評価制度や教育制度を整備した上で、求人の段階からホームページなどを通じてしっかりアピールしましょう。

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