歯科医院経営の実態とは?歯科経営を成功させるための5つのヒント

近年、歯科医院は需要に対して供給が過剰気味であり、現状コンビニより数が多いといわれています。それにともない、歯科業界の競争もより激しさを増しているため、惰性的ないつまでも変わらぬ経営を続けていると、経営不振や廃業に追い込まれかねません。

そこで今回は、歯科医院経営の実態や新型コロナウイルスの影響、歯科医院経営を成功させるためのヒントについて解説します。

数字で見る歯科医院経営の実態

歯科医院の経営を成功させるためには、まず業界内の実態を知ることが大切です。現在の歯科医院を取り巻く状況を見てみましょう。

大規模化・集約化が進んでいる

歯科医院の施設数は2021年1月時点で68,024件(厚生労働省 医療施設動態調査)となっており、全体としては微減傾向にあります。

注目すべきは、個人歯科医院が減少しているのに対し、医療法人による開業が増加していることです。個人:法人の比率を見てみると、20年前は9:1の割合でしたが、現在は8:2になっています。つまり、歯科医院は21世紀に入ってから大規模化・集約化が進んでいるのです。

一方、歯科医師の数は年々増加しており、2010年以降は10万人を超えています。そのため、歯科医師も非常勤の割合が増えるなど働き方に変化が生じています。歯科業界は人手不足といわれていますが、歯科医師については現状その限りではありません。

かつては新たに歯科医師になる人は毎年3,000 名以上いましたが、国家試験の合格率が低迷したことにより、現状では2,000 名程度にまで減っています。2021年の第114回歯科医師国家試験の合格者数は2,123人、合格率は64.6%です。

供給過剰といわれる歯科医師の数を抑制しようという施策なのか、試験の難易度が高くなり、相対評価が採用されたことが合格者数および合格率低下の要因と見られています。

平均売上は約5,400万円

それでは歯科医院の経営状況はどうなっているのでしょうか。2018年度の歯科医院における平均売上(医業収益)は、2018年時点で約5,400万円となっており、前年に比べて全体で1.2%伸びています。一方、個人歯科医院の伸び率は0.6%、医療法人は2.3%と格差が生じています。

また、保険診療よりも自費診療(その他の診療収益)のほうが医業収益に対する寄与率が高くなっていることも注目すべきポイントです。患者さまのニーズの変化に対応するため、今後は自費診療を新たに取り入れたり、メニューの充実化を図ったりすることが重要になってきます。

院長の年収は1,200万円~1,400万円程度

院長個人の平均年収を見てみると、個人歯科医院は約1,200万円、医療法人は約1,430万円となっています。

ただし、給与収入を得ている医療法人の院長と違い、個人歯科医院の院長の年収は売上から費用を差し引いた損益差額です。ここから歯科医院への設備投資、借入金の元金返済分などがさらに差し引かれるため、院長個人の手元に残る額はもっと少なくなると推測されます。

また、個人歯科医院における損益差額はここ数年で増加傾向にありますが、40年前に比べると37%減です。それでいて消費者物価指数が30%アップしていることを踏まえれば、歯科医院の経営は以前より苦しくなっているといえるでしょう。

ちなみに、歯科医院の開設数と廃止数は以下の通りです。

  • 2019年の個人歯科医院の開設数1,095に対して廃止は1,177(マイナス82)
  • 医療法人は開設数316に対して廃止は262(プラス54)

個人歯科医院の廃止には後継者不足といった問題もありますが、人口減や競争激化による歯科医院の経営難、人件費・材料費の高騰、診療報酬改定などによる経営難で倒産するケースも増えているといわれています。

新型コロナウイルス感染症拡大による歯科医院経営への影響は?

2020年の春頃から新型コロナウイルス(COVID-19)感染症が世界的に流行しており、2021年5月時点でも収束する兆しは全く見えていません。

新型コロナウイルスの影響は歯科業界医院の経営にも及んでおり、感染が拡大し始めた2020年3月以降は9割の歯科医院が患者減・売上減となっていました。しかし、同年6月以降には他の医療機関より先んじて回復し、流行前の水準まで戻しています。

歯科医院はもともと飛沫感染防止などに対する意識が高く、平成30年度診療報酬改定では「院内感染防止対策」が強化されました。こういった歯科医院の安全性が広く知れ渡った結果、患者さまが比較的安心して来院できる環境が整ったといえます。

実際、国内で確認されている歯科医院でのクラスター発生は滋賀県や富山県で発生した例などわずかしかありません(2021年5月現在)。

歯科医院の経営を成功させるための5つのヒント

歯科医院の経営ポイント1.自費率をアップさせる

1件あたりの診療報酬点数は減少している一方、2018年度の歯科医院における自費診療(その他の診療収益)の割合は18%程度と増加傾向にあります。

歯科業界の競争が激しさを増している現在、自費率をアップできるかどうかが歯科医院の経営を左右するといっても過言ではありません。「費用がかかっても構わないから良い治療を受けたい」と考えている患者さまも少なくないため、そのニーズに応えるという意味でも自費診療に注力することは重要です。

また、診療単価を高めることで、患者さま一人ひとりにしっかり時間をかけながら、質の高い治療・サービスを提供できるようになります。その結果、患者さまの満足度向上につながるため、長期的な集患・リピート率アップに良い影響がもたらされるでしょう。

関連記事:歯科医院の自費率アップ そのメリットと具体策

歯科医院の経営ポイント2.治療ニーズの変化に対応する

う蝕有病率の低下にともない、保険が適用される従来型の補綴治療はニーズが年々低下しています。また、少子高齢化によって日本の人口は減少傾向にあるため、2045年には歯科医院の患者数が約16%減となることが予測されているのです。これは歯科医院の経営に直結するポイントです。

その一方、65歳以上の患者数は2045年まで増加するといわれています。高齢者の場合、欠損補綴や歯周疾患などの治療が多くなりますが、70歳以上になると通院困難に陥る患者さまも出てくる可能性があるため、訪問診療に注力するのも歯科医院の経営戦略の一つです。

また、価値観やライフスタイルの変化にともない、見た目の美しさを追求したり、口元のコンプレックスを解消したりすることを望む患者さまも増えているため、近年ニーズに高まっているマウスピース矯正や審美歯科を取り入れるのもおすすめです。

歯科医院の経営ポイント3.リコール率を高く維持する

どれだけ新患を獲得してもリピート率を高められなければ、広告費にとめどなく資金を費やすことになります。そのため、歯科医院の経営安定化を目指す場合、従来よりリコール率を高めることが重要となってきます。

また、患者調査によると、う蝕に代わって「歯肉炎・慢性歯周炎」と「検査・健康診断(査)及びその他の保健サービス」の患者人数が大きく増えています。治療したら終わりではなく、その後も患者さまに来院してもらえるよう、定期検査やメンテナンスの必要性を説くことが大切です。

特にメインテナンスは歯科衛生士に任せられる部分も大きいので、予防のためのリコール率アップの取り組みは経営安定化につながります。

関連記事:リコール率アップの4施策 具体的なリコール施策を解説

歯科医院の経営ポイント4.スタッフ教育を徹底する

日本歯科医師会の「歯科医療に関する生活者調査」によると、直近で受診した歯科医師・歯科医院に満足している理由として、「時間通りに治療を受けられた」「受付・スタッフの対応が良かった」といった内容が上位に挙がっています。

患者さまがストレスなく治療を受けられるようにするためには、治療自体の質を高めることはもちろん、各スタッフの教育や医院マネジメントにも注力することが不可欠です。

歯科衛生士や歯科助手のスキルアップを支援する制度を設けたり、接遇やコミュケーションに関する外部研修を取り入れたりするなど、スタッフ教育の方法は複数あります。

教育にはコストが発生しますが、患者さまの満足度向上が歯科医院の経営の安定売上につながることを踏まえれば、お金と時間をかける価値はあるでしょう。

歯科医院の経営ポイント5.ホームページで他院と差別化できる特徴をアピールする

受療行動調査によると、外来で医療機関にかかる患者さまの多くは、来院前に何らかの手段で情報収集しています。最も多いのは家族や友人からの口コミですが、その次に多いのが「医療機関が発信するインターネットの情報」です。

歯科医院はコンビニより多いといわれるほど乱立し、歯科業界の競争も激化しているので、ホームページで自院ならではの特徴や魅力をアピールする必要があります。開業前の段階から打ち出すべきアピールポイントを明確にし、その観点から考えて診療圏内に競合がいないかチェックすることも重要です。

まとめ

歯科医院が供給過剰といわれる現在、今まで通りの経営スタイルを続けていると、近隣の競合に患者さまを奪われてしまうかもしれません。

このような状況下で歯科医院経営を成功させるためには、業界内の実態をしっかり把握したうえで、自費率アップや差別化につながる対策を講じることが大切です。今回ご紹介した内容を参考にしながら、具体的な対策を検討してみましょう。

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