歯科医院の自費率アップ そのメリットと具体策

歯科医院の医業利益に大きな影響を与えるのが、自費治療の割合=自費率です。しかし、保険診療に比べて高額になりがちな自費治療は、なかなか患者さまに勧めにくく、自費率アップに難しさを感じている方も多いのではないでしょうか。

最近では患者さまがより良い治療を望む傾向も強く、適切な方法での提案やリコール施策、幅広い決済手段への対応などを行うことで、自院と患者さまの双方が満足する結果を得ることが可能です。

この記事では、歯科医院の自費率の平均値や自費率アップのメリット、自費率を上げる具体的な方法まで詳しく解説します。

歯科医院の自費率の平均は?

令和元年に実施された中医協による第22回医療経済実態調査では、2018年度の歯科診療所における自費診療(その他の診療収益)の割合は18%程度であることが分かりました。

個人開業の場合は15%、医療法人は20%と差がありますが、いずれにせよ2012年時点では全体で約16%であったことを考えると自費率は近年増加傾向にあるといえます。

国内市場の成熟や口腔内の健康に対する意識の高まりから、患者さまのニーズも「とにかく安く」というよりは「適切な対価を支払って質の良い医療サービスを受けたい」というものに変わってきているのです。

インプラントや矯正、セラミック・ホワイトニングなどの審美歯科など、ただ歯の治療をするだけでなく、見た目の美しさやQOL向上のための治療を選択する人が増えていることが分かります。

歯科医院が自費率向上を目指すべき理由・メリット

従来の保険診療のニーズは低くなっている

フッ化物応用(フッ素入り歯磨剤など)の普及や、歯磨き・生活習慣の改善といった患者さまの口腔ケアへの意識の変化によって、う蝕有病率は減少傾向にあります。保険の範囲内で行う「削って詰める」従来型の治療ニーズは以前よりも低くなっているのです。

中医協(中央社会保険医療協議会)が報告したデータを見ると、診療報酬点数やレセプト1件あたりの平均点数は減少傾向にあります。中でも「歯冠修復及び欠損補綴」の減少は顕著です。

この事実からも、歯科医院経営の安定化には「歯冠修復や及び欠損補綴」に頼らない、自費率向上が今後さらに重要なポイントになることが分かります。

患者さまの満足度が向上する

患者さまが自費治療を受けた理由として多く挙げられるのは、「費用がかかっても少しでも良い治療をしたい」というもの。保険でまかなえる治療以上のクオリティを望む患者さまは今や少なくありません。

保険診療がメインの経営だと、回転率を上げるためにどうしても一人ひとりの診療に割く時間が少なくなってしまいますが、診療単価が高ければ患者さまに対してしっかりと時間をかけて治療・サービスを提供できるため、治療の質や満足度の向上にもつながります。

スタッフの質・モチベーションが向上する

歯科衛生士の離職率の高さは知られるところですが、その理由には仕事内容や待遇への不満があります。質の高い歯科医療を提供したいと考えているスタッフは、短時間の診療でとにかく多くの患者さまを受け入れる診療スタイルには満足できず、その職場を離れてしまうことも多いのです。

患者さま一人ひとりに時間をかけられる診療環境を整え、なおかつ医業利益をアップして給与として還元することで、スタッフのモチベーション向上や優秀な人材の確保にもつながります。

歯科医院が自費率を高めるためのポイント

患者さまに自費治療の選択肢を提示する

「提案がなかった」「自費治療のメリットを知らなかった」といった理由から、保険診療を選択する患者さまも多いのをご存知でしょうか。本当に患者さまにとって利になる治療は、保険の範囲内では難しいケースも少なくありません。

日本歯科医師会が一般生活者に対して行った調査によると、「保険適用と適用外それぞれの治療についての説明」を歯科医師に求める声は多くあります。患者さまの健康を第一に考えて複数の選択肢を提示することが、医院と患者さま双方のメリットになるといえるでしょう。

定期検診・歯周病予防・メインテナンスに力を入れる

厚生労働省の調査によると、う蝕が減った代わりに、以前に比べて患者人数が大きく増えているのは「歯肉炎・慢性歯周炎」や「検査・健康診断(査)及びその他の保健サ-ビス」です。

特に歯周病が全身に及ぼすさまざまな影響は一般にも周知されつつあり、歯周外科治療や唾液検査・細菌検査などで自費治療の訴求もできるようになりました。

また、予防歯科の領域は歯科衛生士に任せられる部分も大きく、設備投資や材料代などもさほどかからないため、取り組みやすいのも大きなメリットです。

再来院促進・リコール施策をする

口腔環境維持のためのメインテナンスは定期的に提供してこそ効果を発揮するものです。口腔ケアへの意識が高まっている今、定期的なメインテナンスの重要性のアピールは、医業利益の向上に欠かせません。

また、自費治療をするなら「信頼できるかかりつけの先生にお願いできれば安心だ」と考える患者さまも多いので、適切なリコール施策によって継続的に来院していただく仕組みを作ることは重要なポイントです。

自院の専門性や売りをきちんとPRする

歯科医院を選ぶポイントとして、歯科医師の技術の高さを重視する患者さまが多いことは言うまでもありません。患者さまがきちんと比較検討できるよう、ホームページなどで自院の特徴や専門性を分かりやすく伝えるマーケティング施策が不可欠です。

他にも待合室に自費治療のメリットをアピールするポスターを掲示したり、ユニットのモニターで治療の流れを説明する動画を流したりと、患者さまが待つ時間に自然に目に入るようPRするのも効果的でしょう。

クレジットカード決済やデンタルローンを導入する

自費治療の中でも特に高額になりがちなインプラントや矯正などについては、費用を理由に治療をためらう患者さまも少なくありません。

そこで重要なのが現金以外の利便性の高い決済手段を用意することです。特にクレジットカード決済やデンタルローンなどは、患者さまの支払い負担を軽減できるため、治療を受けることを決断しやすいというメリットがあります。

まとめ

高額な自費治療はなかなか勧めにくいと考えている方も多くいますが、患者さまのニーズに沿った提案は、患者さまと医院双方にとってメリットがあるものです。

自院の得意な治療のアピールや患者さまへの説明をきちんと行った上で、患者さまの満足度の高い治療を提供することは、歯科医院経営の長期的な安定化につながります。

引用元:

中央社会保険医療協議会 第22回医療経済実態調査 (医療機関等調査) 報告 参照歯科診療所(集計2)

中央社会保険医療協議会 歯科医療(その1) 参照診療報酬点数の推移

厚生労働省 患者調査 参照歯科診療所の推計患者数 歯科分類別

日本歯科医師会 ⻭科医療に関する⽣活者調査 参照⻭科医師・⻭科医院との付き合い⽅