患者さまの満足度も上がる 歯科助手教育のポイント

「歯科助手の募集を出してもなかなか人が集まらず、いつも人手が足りない」
「入職してもすぐに辞めてしまい人材が定着してくれない」
と悩む院長や事務長の声は少なくありません。

アルバイトやパートといった非正規雇用も多い歯科助手は雑務を担うポジションと考えている方もいるかもしれません。しかし実際には専門性が高く業務も幅広いため、しっかりと教育しなければ人材は育たず、本人もやりがいを感じられず離職してしまうケースも多いのです。

この記事では、歯科助手への適切な教育がもたらすさまざまなメリットや、具体的な教育・研修方法を解説します。

歯科助手の教育が重要な理由

歯科助手は専門性が高く大変な仕事

歯科助手は歯科衛生士と違って無資格でも従事できますが、受付対応・治療のアシスタント・在庫管理・レセプト作成など業務は多岐にわたり、相応の知識と経験が求められる仕事です。医療の専門資格ではないからこそ、幅広い業務を行うことができるのです。

特に、医院の顔ともいえる受付業務では、歯科助手の患者さまへの対応が医院の印象や売上を左右することもあります。

アルバイトやパートとして雇用することも多い歯科助手ですが、代替可能な労働力ととらえずしっかりと教育し、頼り甲斐のある戦力になってもらうことで、職場環境や医院の経営に期待以上のメリットをもたらしてくれることもあるのです。

歯科助手は慢性的に人手不足

2017年の厚生労働省の医療施設調査によると、約6万8,500ある歯科医院に対して、歯科助手(歯科業務補助者)の数は約7万人。つまり、1診療所につきギリギリ1人確保できるレベルです。

20年前には約6万5,000の歯科医院に対して歯科助手の数が10万人を超えていたことを考えると、歯科助手として働くことを選択する人が急激に減っていることが分かるでしょう。

歯科助手の仕事を離れる人からは、「仕事に求められる専門性や業務の大変さと給与が見合わないと感じた」「仕事内容をしっかりと教えてもらえないまま業務に付くことに不安を感じたりした」ことなどが離職の理由として挙げられています。

歯科業界では、以前から人手不足が大きな課題となっています。人材の確保がどんどん難しくなっている現状では、経験が浅い人でもしっかり教育していく必要があります。

歯科助手の教育体制が整っていないことで生じる問題

離職リスクが高くなる

とはいえ、日々の業務に追われ、なかなか新人教育に人手や時間が割けないという方も多いのではないでしょうか。

しかし経験の浅い人にとって、訓練もないままアシストや受付業務に就くことは大変な不安を伴います。その結果、診療が滞ったり、ミスが生じて怒られたりすると「自分はこの仕事に向いていないのでは」という考えが浮かび、モチベーションの低下を招きます。

また、経験者であっても業務内容は医院によって異なるため、きちんと教育せずに放置されると孤独感や無力感がつのり、精神的に追い込まれて早期に離職を選択してしまう恐れがあります。

患者さまの満足度が下がる

受付対応も担う歯科助手は、不安や痛みを抱えた患者さまが来院の最初と最後に接する、印象に残りやすい存在です。

受付で丁寧さや思いやりに欠けた態度を取ったり、予約管理や会計に不手際があったりすれば、医院への印象は悪くなります。

また、バキュームの使い方や印象材の練和、石膏注入といった診療補助の質も、治療の精度や満足度に大きく影響する要素です。誰でもできる簡単な業務と軽く見ず、きちんとトレーニングする必要があります。

他のスタッフのモチベーションが下がる

歯科助手への教育の不足は、医院全体のモチベーションにも影響します。例えば器具洗浄が終わっていない、予約管理ができていない、在庫が足りない、入職したのにすぐやめてしまったといった問題が起こると、治療への直接的な支障だけでなく、他のスタッフが不満や疲れを溜めることになるからです。

歯科助手へのしっかりした教育が、長い目で見れば医院の治療や接客の質にもつながると考えましょう。

歯科助手の教育のポイント

教育・研修をシステム化する

スタッフの教育を効率的・効果的に行うためには、「誰が・何を・いつまでに・どのように」教えるのか事前に計画を立てる必要があります。

「ちょっと教えておいてあげて」などの不明瞭な指示では、教える人によって方法が異なったり、教育のスピードがまちまちだったりと教育の成果が上がりにくい恐れがあるからです。

また、教育対象者の知識・スキルレベルを事前に確認しておくことも重要です。できること・できないことを明確にしておけば、効率良く仕事を教えることができます。

業務マニュアルを作る

歯科助手の教育には、業務マニュアルをしっかりと作っておくことも大切です。マニュアルには、再現性の確保、教育コストの削減、随時見直して復習できるといったメリットの他、既存の業務フローを見直して改善できるという効果も見込めます。

業務時間外にも気軽に手に取れるよう、マニュアル冊子を複数作ったり、クラウドなどのWebシステムを使ってスタッフ全員が共有できるようにしたりするのもおすすめです。

OJTを徹底する

きちんと歯科助手業務をこなせるよう教育するためには、OJT(On The Job Training=実務トレーニング)の徹底も重要です。

資料や口頭だけで業務内容を説明してすぐに仕事を任せてしまうと必ずミスが発生し、患者さまや他のスタッフに迷惑をかけてしまうだけでなく、本人も自信を喪失してしまう恐れがあります。

一定期間は教育担当者を決めてOJTを実施し、継続的にフォローすることが優秀な人材を育てるために不可欠です。

外部の研修・セミナーを活用する

最近では接遇やカウンセリング、アシスタント業務についてのスキルアップセミナーも数多く開催されています。

歯科助手としてステップアップしたいと考えているスタッフのために、外部の研修やセミナーを受講する機会を作ってあげましょう。セミナーで得た知識や技術を実際の仕事で生かすことができれば、スタッフのモチベーションが向上し、ひいては治療の質や患者さま満足度の向上につながります。

まとめ

歯科助手に限らず、歯科医院の教育体制の有無は、きちんとしたマネジメントをしているか、スタッフを大事にしてくれるかを推し量る材料になります。

充実した教育体制を整備して求人サイトでもアピールすれば、やりがいのある仕事がしたい、自分の能力を生かしたいと望む人材を確保することにもつながります。

業務を円滑に行い、院内を良い雰囲気に保つためにも、今回ご紹介したポイントを押さえてスタッフ教育を徹底しましょう。

引用元:

厚生労働省 医療施設調査 参照年次・職種別