歯科医院の売上事情とは?平均売上やアップさせる方法と経営のコツ

歯科医院を経営するなかで、売上アップは誰もが願うことではないでしょうか。

しかし、どのような施策を行えば1日の売り上げが増えるのか、具体的な方法が気になるところです。

この記事では、歯科医院を経営する院長先生向けに、歯科医院が売り上げをアップさせるための方法を解説しています。

さらに、歯科業界の売上事情の計算方法や経営におけるポイントも紹介していますので、成功をサポートする情報としてぜひお読みください。

歯科医院の売上事情とは?平均売上や売上額ごとの割合

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歯科業界の売り上げの構造とは、どのような数値になっているのでしょうか。

実際の調査結果を元に、年間の平均売上や売上別に見た歯科医院の割合について解説します。

歯科医院の年間売上の平均額

厚生労働省が実施した「医療経済実態調査」によると、個人医院と医療法人の売り上げにあたる「医業収益」の平均(2018年度調査)は、それぞれ次のような結果となりました(介護収益除く)。

  • 個人医院:4,469万円
  • 医療法人:9,447万円

どちらも保険診療収益の割合が多くを占めており、金額の伸び率は個人医院が1.3%、医療法人が2.3%と増加傾向です。

参考:e-Stat「第22回医療経済実態調査(医療機関等調査)」

年間売上ごとの歯科医院の割合

歯科経営情報レポート「2020年決算データからみる歯科診療所経営実績分析」によると、2019年、309件の歯科医院を対象に調査を行ったところ、以下のような結果となりました。

5,000万円未満:51.1%(158件) 5,000万円以上1億円未満:37.8%(117件) 1億円以上:11.0%(34件)

個人開業の歯科医院(220件)に限ると以下のような割合となり、半数以上が5,000万円未満の年間売上であることが分かります。

  • 5,000万円未満:62.7% (138件)
  • 5,000万円以上1億円未満:34.5% (76件)
  • 1億円以上:2.7%(6件)

参考:歯科経営情報レポート

歯科医院が経営難に陥ってしまうよくあるパターン

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(画像=pixta)

来院してくれる患者数が少ない

来院してくれる患者さんの数が激減したり開院当初から見込みより少ない状況が続いていると、経営難や廃業の最大の原因となってしまいます。

これは経営者なら誰でもわかっていることで、一番恐れていることではないでしょうか。

「元々1日100人来ていた患者さんが30人に減った」などの場合は、100人が来る想定で人件費や固定費、様々なサービスを準備しているため、全体の収支の計画が大きく狂い、最初から30人程度で推移している医院よりも非常に危険です。

以前来ていた患者さんが来なくなってしまうのにはいくつかの原因があります。

  1. 期待通りの治療効果が得られなかった
  2. スタッフが感じが悪かったり待ち時間が長い、衛生面の不安や説明がわかりづらいなど歯科医院に不満があった
  3. 近くにもっと良い歯科医院ができた
  4. 治療が終わり歯科医陰に通う必要がなくなった

この4つのうち3と4は仕方がないものですが、1と2は歯科医院が改善すべき課題であることを理解しましょう。

さらに厄介なことには、歯科医院は多くの人が「近いから」通うため、患者さん同士の距離も近く、知り合いのケースが多くあります。

そのような場合、「悪事千里を走る」と言われるように、悪い噂は広まりやすいのです。

実際に通ってこなくなる患者さんには会うこともないので、一体どのような不満があったのか、何が原因でリピートしなかったのかは決してわかりません。

だからこそ、1と2については絶えず「自分の委員は患者さんの期待に答えられているか」と確認し続ける必要があります。

患者は来院してくれているが、支払い単価が低い

患者数や予約数は特に減っていない、あるいは来院の患者数は比較的多いにも関わらず、経営難に陥ってしまう歯科医院もあります。

これは一体なぜなのでしょうか。このような場合は、「患者数を増やす」以外の課題があります。

来院患者数が以前に比べて減っていない、あるいは計画通りの患者数なのに、歯科医院の収入が減っていたり慢性的に経営が苦しい場合には、患者一人の単価をしっかりと確認する必要があります。

患者数が減っていないのに段々経営が苦しくなっているなら、一人当たりの治療単価が減っているということ。

同じ治療時間をかけていても以前に比べて保険診療が増えていたり単価の低い治療ばかりになっていると、当然全体の収入が減ってきます。

この場合は、「自費診療を増やす」「今まで治療だけできていた人には検診を促す」などを行なって、患者一人一人の単価を上げることましょう。

予防歯科や幼少時のフッ素の普及などで、以前に比べて虫歯治療が減っているため、「虫歯治療のために何度も歯科医院に通院する」というケースは減っています。

そのため、従来のやり方だけでは、どんどん患者の足が遠のいてしまいます。

これを解決するには、新たな選択肢を加える、例えばコロナ禍で大きく需要が増えているマウスピース矯正などの新しい治療を取り入れるのも一つの方法です。

このような「今までにない治療」「定期検診」などを提案することで、虫歯治療プラスαで一人当たりの単価が上がることが期待できます。   

売上よりも経費が大きくなってしまっている

計画通りの患者数・収入があるのに経営状態が良くない場合は、収入に対して支出が多いケースがほとんどです。

人件費や家賃、器具のリース代や光熱費といった固定費や、開業の時の借入金などが売り上げ規模に比べて多いのではないでしょうか。

1990年代に保険診療の範囲が広がったために、二代目三代目と続く歯科医院は今までも同じ治療だけでは大きな減収となってしまいました。

そのため、定期的に新たな設備投資をしたり研修の導入、優秀な人材を入れるなど気づかぬうちに支出や器具の数が増えている歯科医院も多いのではないでしょうか。

「人件費は売り上げの30%以内に抑える」というのは経営の基本なので、人件費はもちろん、スタッフの数や勤務日数が適切なのかなど、まず確かめましょう。

また、支出を見る際には借り入れも忘れてはなりません。借り入れが多い場合も月々の借入金の返済が増え、キャッシュフローが悪化します。

借入金の返済金額については損益計算書に表記されず、入金や支出のタイミングもバラバラなので、つい見落としているケースもあるかもしれません。

このように、「患者数は足りている」「収入も十分」なのに経営がうまく回っていない場合には、支出や診療を見直す必要があります。

歯科医院が売上を増やす3つの方法

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歯科医院における売り上げの構成要素は、「患者数」「来院1回当たりの支払い単価」「来院回数」の3つが挙げられます。

経費が過大な歯科医院を除き、これら3つを高めることができれば、自ずと売上アップにつながるといえるでしょう。

ここでは歯科経営において、それぞれの改善を実現するために必要な対策を解説します。

歯科医院が売上を増やす方法1.患者数を増やす

開院して年数が浅い歯科医院の場合、売上を考えるうえでも患者数の確保が大切です。

特に新規患者の獲得が最重要課題となります。

歯科医師数がここ数十年増加傾向といわれるなか、新規患者獲得のためには他院との差別化に努め、地域の患者に選ばれる施策が欠かせません。

主な集客施策には、次のようなものが考えられます。

  • 商圏へのチラシ・ポスティング
  • 屋外看板
  • 街頭広告
  • ホームページの改善
  • SNSなどでの情報発信
  • Web広告

ネット検索やSNSで歯科医院を探す患者も増えているため、従来の集客施策に加えてオンラインの活用も重要です。

自院ホームページやGoogleマイビジネスなどの内容を充実させることで、患者が歯科医院を選ぶ際の判断材料になります。

*関連記事:歯科・歯科医院の集客で行うべき8つの施策 差別化策や広告の注意点

歯科医院が売上を増やす方法2.支払い単価を増やす

来院1回当たりの支払い単価を増やすためには保険診療に加え、自由診療(自費診療)の提案も行いましょう。

前掲「歯科経営情報レポート」によると、売上上位20%の歯科医院は、売上全体に占める自由診療収入の割合が高い傾向にあります。

医業収入合計に占める自由診療収入の比率は、以下の通りです。

歯科医院全体:18.0% 歯科医院の売上上位20%:26.7%

口腔ケアへの意識が高まり、患者のニーズも多様化しています。自院の専門性をアピールするとともに、複数の選択肢を提示することが大切です。

参考:歯科経営情報レポート

*関連記事:歯科医院の自費率アップ そのメリットと具体策

歯科医院が売上を増やす方法3.リピートを促す

患者のリピートを考えるうえでは、予防歯科が重要となります。

厚生労働省の医政局歯科保健課が発表した資料によると、「3歳児、12歳児の1人平均う歯数・う蝕有病率」は年々減少しており、それぞれ次の通りです。

1989年 2016年
3歳児 1人平均う歯数
2.90本
0.54本
う蝕有病率
55.8%
15.8%
12歳児 1人平均う歯数
4.30本
0.84本
う蝕有病率
88.3%
35.5%

一方で日本では65歳前後の高齢患者は増加傾向にあり、歯周病の罹患も見られます。

歯科治療だけでなく、技工士や歯科衛生士の技術のアップや定期予防歯科の取り組みによって患者のリピートにつなげることが大切です。

参考:医政局歯科保健課「う蝕罹患の現状」

歯科医院経営で売上に関連して重要なポイント

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(画像=pixta)

売上アップにおける3つの対策を紹介しましたが、これらを実行するだけでは不十分で、売上計画の作成や体制の整備が必要です。

ここでは売上アップに向けた歯科経営のポイントについて解説します。

売上計画を立てる

売上アップを狙うなら、売り上げの計画やシミュレーションが不可欠です。

5〜10年後の長期的な計画に加え、半年〜1年といった短期的な計画も設定しましょう。

売上計画は院長の希望的予測ではなく、現実的かつ根拠のある数値を設定します。

現状を把握し、設備やスタッフ数・スキルなどの考慮も必要です。

全体の売上目標に加え、メンテナンスや新規患者数といったカテゴリ・部門ごとの数値も設定するとよいでしょう。

提供体制を整える

売り上げをアップさせるには、集客数や支払い単価を増やすことが重要ですが、同時にオペレーション面の整備も不可欠になります。

集客数の増加に伴い、より多くの患者に対応しなければなりませんし、支払い単価を増やすためには、提供する治療・サービスの幅を広げることが必要です。

具体的にはスタッフの確保、スタッフ教育、マニュアル整備、歯科医院の院長自身のスキル習得などが挙げられます。

*関連時期:メリットが大きな歯科衛生士のスキルアップは積極的にサポートしよう

*関連記事:歯科助手のスキルアップに歯科医院が取り組むメリットとスキルアップの方法

手元に残る利益も意識する

売り上げを増やしても、手元に利益が残らなければ意味がありません。

経営において売上アップと同じくらい、利益を増やすことは重要といえます。

人件費や設備投資などへの支出は必要ですが、過大だと安定した経営は望めません。

売上拡大を目指す際には「売り上げ」と「経費」のバランスにも意識しましょう。

売り上げに対する人件費比率は25%以内が適切といわれており、サービス業で理想的な利益は売り上げの9~12%とされています。

まとめ

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(画像=pixta)

歯科医院の売上アップには、「患者数」「支払い単価」「来院回数」を増やすことが重要です。

ただし、やみくもに売上アップを目指せばよいというわけではなく、きちんと売上計画を作成し、提供体制を整備することも必要になります。

売り上げだけに注視せず、利益を残すことも忘れてはいけません。

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あきばれ歯科経営 online編集部

歯科衛生士でもある「あきばれホームページ」歯科事業部長の長谷川愛が編集長を務める歯科医院経営情報サイト「あきばれ歯科経営 online」編集部。臨床経験もある歯科医師含めたメンバーで編集部を構成。

2021年5月14日「あきばれ歯科経営 online」正式リリース。全国1,100以上提供している「あきばれホームページ歯科パック」による歯科医院サイト制作・集客のノウハウを元に、歯科医院経営を中心とした歯科医院に関する様々な情報を経営に役立つ観点からお届けする。